2009年05月08日
テニスのサービス -4- (1619)
テニスの科学(60)
― サービスの球種打ち分け技術を科学する(4) ―
「球種によって動きはどう変わるのか(3)」
インパクトにおける内旋角度は、フラットサービスにおいてもっとも大きな値を示しました。
スイングの力強さは内旋の動きによる割合が大きいことは知られています。
フラットサービスでは、より強い打球を得ようとして、腕をできるだけすばやく前方へ振り出すために大きな内旋動作を行うものと考えられます。
また、インパクトにおける回内角度は、フラットサービスに比べて、スライスサービスやスピンサービスのほう大きな値を示しました。
ボールをこすりあげるように打つためには必要な動きです。
人間の器用さを決めるのは、回内の動きが大変重要です。
スピンをコントロールするために、薄く当てる感覚などを高めることが重要で、大変に器用な動きが求められるので、回内の動きで調整を行うと考えれば納得がいきます。
回内や内旋をどのくらいの大きさで、また、いつ行うのかについては触れませんが、サービス球種の打ち分け練習とともに回内と内旋の動きをトレーニングしておく必要があるということです。
継続して行えば、かならずや球種の打ち分けの技術を高めることができます。
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2009年05月06日
テニスのサービス -3- (1617)
テニスの科学(59)
― サービスの球種打ち分け技術を科学する(3) ―
「球種によって動きはどう変わるのか(2)」
ここまでは、身体のうち胴体部分と下半身の動きについて球種の違いによる特徴を整理してきましたが、それだけで打ち分けが出来るほどテニスは甘いものでありません。
そう、上肢の動きをつかんでおかなくては、完璧な球種の打ち分けは出来ません。
そこで、上肢の動きについてみてみることにしましょう。
しかし、この上肢の動きのデータを得るのは実に大変なのです。
肩と肘と手首の動きを合わせると、肩で3つ、肘で1つ、手首で3つの7つの動き、14もの動作があるのです。
それを一つ一つ見ていかなくてはならないのですから、大変な作業であることはおわかりいただけると思います。
ついでですから、これらの動作を整理しておきましょう。
<肩>
屈曲と伸展
外転と内転
内旋と外旋
<肘>
屈曲と伸展
<手首>
橈屈と尺屈
掌屈と背屈
回内と回外
これらすべての動きについて、その動きの角度を解析してみました。
その結果、サービスにおけるフォワードスイング期では、肩の屈曲と外転と内旋、肘の伸展、手首の橈屈と掌屈と回内が、ほぼ同時に起こり、腕の動作を作っていることがわかったのです。
それらの動きがサービスの動作に関係することはわかっていたのですが、タイミングにはかなりずれがあるというのが定説でしたので、少し意外な感じがしたのですが、それが真実です。
しかし、同時におこっているといっても、その大きさなどには違いがあります。
球種の違いによって、どの動きに違いがあらわれるのかということにもっとも興味が集まるは当然です。
大きな違いを示した動きは2つでした。回内と内旋です。
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2009年04月29日
テニスのサービス -2- (1610)
テニスの科学(58)
― サービスの球種打ち分け技術を科学する(2) ―
「球種によって動きはどう変わるのか(1)」
身体の使い方を変えることによって球種を打ち分ける技術が必要であると言いましたが、動きにどのような違いがあらわれるのかを知らなくては、球種の打ち分けなどできるわけもありません。
最近は、テニスのように捻りを伴う動作を解析する方法が充実し、関節の角度をすべて解析できる方法なども提言されてきており、より細かくて正確なデータを算出することが可能になってきました。
このようなデータを得るためには、けっこう大変な実験準備や解析過程を経なくてはなりませんが、このような点を解析して実際の指導に活かすことが大切です。
インパクトの形がどれくらい違うのかをみてみると、身体の開き具合や肩の回転角度と傾斜角度などに違いがあることが観察できます。
身体の開き具合がどれくらい違うのかを知るために、上から見たときの両肩を結んだ線とネットとの角度データを算出してみたところ、スピンサービスだけが他のサービスとは違うことが示されました。
フラットとスライスのサービスは、肩を十分に捻った位置から、肩を開きながら、つまり肩がネットと平行になるように回転させながら打球しているのに対して、スピンサービスでは肩の開き具合が小さいのです。
そのかわりに肩の傾斜角度はもっとも大きいことが示されました。
つまり、フラットとスライスは肩の水平回転を積極的に使うサービスであり、、スピンサービスは肩の垂直回転を使うサービスであるといってよいのかもしれません。
よく、肩の「横回転」と「縦回転」という言葉が使われますが、まさにスピンサービスと他の2つのサービスの違いを言い表している言葉です。
では、このとき身体の捻りの大きさに違いはないのでしょうか。
結論を言えば、捻りの大きさにはほとんど差がないということです。
つまり、スタートは同じで、その後の身体の回転運動を変化させることによって球種の打ち分けを行っているのです。
より丁寧に説明すると、スライスサービスでは、もっとも早いタイミングで、肩をほぼ水平に回しつつ打球し、フラットサービスは、まったく同じ動作でありながら、肩の開きをやや遅らせるとともに押さえぎみに打球するわけです。
それに対してスピンサービスでは、肩の水平での開きを押さえて、肩を上方向に引き出しつつ打球します。
肩は、球のような関節を形成しているうえに、肩甲骨の動きを伴って、複雑な動きが可能になっているので、このような使い分けができるのです。
ここで、
「よし、俺も肩の動きをトレーニングして、球種の打ち分けの技術をマスターするぞ!」
と意気込んでいらっしゃる方は少しお待ちいただきたい。
いま、身体の捻りについてデータをみてみたのですが、身体の捻りは胴体の捻りだけから生みだされるものではなく、むしろ膝や股関節などの下半身の動きによって生みだされる割合の方が大きいのです。
膝の動きも調べてみると、スピンサービスほど膝の沈みこみが大きく、その沈みこみを積極的に使って身体の捻りというか、身体の反りを生んでいることがわかりました。
スピンサービスは、その反りを利用し肩の縦回転運動を積極的に行うサービスの技術であるということができます。
それに対して、スライスやフラットサービスは膝の沈みこみがあまりみられません。
指導書などには、スピンサービスほど捻りが重要であるとかかれることが多いのですが、ここで言う捻りとは反りのことを言っています。
捻りの大きさにはほとんど差は見られませんが、パワーのあるサービスを打つためには、膝の屈伸をあまり極端に使ってしまっては、かえってパワーが落ちることが知られています。
身体の捻りと、反り、膝の曲げをバランスよく使うことが大切です。
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2009年04月27日
テニスのサービス -1- (1609)
テニスの科学(57)
― サービスの球種打ち分け技術を科学する(1) ―
サービスはゲームの勝敗を大きく左右します。
サービスの威力は、スピードはもちろんのこと、コースへの打ち分けや、フラット、スピン、スライスなどの球種の使い分けなどで決定されます。
球種の違いを産み出す要因としては、
1.インパクト位置
2.スイング方向
3.身体の捻り
などが考えられます。
これらの要因のうち、解析されたデータを整理しながら、球種の打ち分けのコツを探っていきます。
「球種によってインパクト位置はどれくらい違いがあるのか」
インパクト位置の違いについては、フラットサービスが、もっともネット寄りで、かつもっとも高い位置でインパクトしていることがわかっています。
フラットサービスは、やはりスピードがもっとも重要です。
スピードを増すためには、スピンの量を減らしてネット方向への運動量を大きくしたい。
そのために、ネット寄りにボールをトスして打球することは理にかなっています。
また、スピードが増しても、確率を落とさないためには高い打点位置で打つことは大切なことです。
この点は、多くの指導書で解説されていることに相違しません。
その差は、スピンサービスに比べて、ネット方向に約30cm、高さで約25cmの差です。
この差が大きいか小さいかの判断は読者の方々にまかせますが、指導書の中には、フラットサービスとスピンサービスのインパクト位置の違いについて、
「上下方向でラケット1本分くらいの差がある」
と解説している場合もあります。
感覚的にはそれくらいの差があると感じるのかもしれませんが、実際にはそれ程大きな差はないというのが感想です。
スライスサービスについては、両サービスの中間から、ややスピンサービスに近い位置がインパクト位置です。
では、左右方向のインパクト位置についてはどうなのでしょうか。
スライスサービスがもっとも右側(右利きの場合)で打球していることがわかっています。
このことは当たり前のように思われるかもしれませんが、その差はフラットに比べて約45cm、スピンに比べると約90cmにもなります。
ネット方向や上下方向の差に比べると大きな差であると思います。
トスの投げあげる方向を変えることによって球種を打ち分けることは大切な事なのかもしれません。
しかし、上級者になってくればくるほど、トスの位置によって球種を悟られないようにする技術を身につけなくてはならないのは当然です。
トスの方向を変えることによって球種を打ち分けることは、球種の違いによるスピンの感覚をマスターするためには必要かもしれませんが、上級者では身体の使い方の違いよる打ち分け技術を身につける必要があるように思われます。
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2009年04月22日
構えを科学する-8- (1604)
テニスの科学(56)
-落ち着いた構えとはなにかー
「構え」とは「静」であることが重要視され、微動だに動かないことが良いように思われていますが、これは間違いです。
「静」ではないとはどういうことでしょうか。
運動と姿勢は別々にコントロールされるのではなく、密接に統合されているといることがわかっています。
すばやく動くことができるような、また無理なく力強い打球を行うことができるような身体姿勢は、静的な状態ではなく、動的に安定している状態なのです。
つまり、適切な筋肉の緊張感とメンタル的な緊張感をあわせ持ちつつ、微妙に身体が動揺している状態が良い構えなのです。
しかし、この動揺が外から見てわかるようでは失格です。
独楽のたとえにもあるように、外見上は静かに落ちついて雰囲気を保ちつつ、微妙にしかもリズムよく動きがあることが重要です。
武道のなかに「内剛外柔」という言葉があります。
落ち着いた良い「構え」とは、まさにこのことを指しています。
今回は「構え」にスポットをあてて、その身体的な要素について述べてきましたが、「構え」は息遣いや目線も含め全身全霊でプレーヤーの「質」を表現するものであると考えています。
このような「質」は単にかたちをまねただけで身に付くというものではありません。
そこには軸の意識や集中力など、意識の問題や、メンタルの問題を抜きにして語ることはできません。
また、このような「構え」は、日常の生活や日常の練習のなかで常に意識して、身に付くものであると思います。
日々努力して、歩く姿だけで「むむっ!あいつは、なかやるな。」と思わせてみたいものですね。
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2009年04月20日
構えを科学する-7- (1602)
テニスの科学(55)
-力は抜いて構えるのが良い?-
さて、身体の前傾と深さ両腕の位置などが良い「構え」を作る身体の角度、(これは姿勢要素ということができる)について見てきたわけですが、次に力の面に目を向けてみましょう。
良い「構え」とは、力を抜けるだけ抜けば良いものなのでしょうか。
よく指導者からは、
「力を抜け」
とか、
「力を抜いて構えろ」
と指導されるので、なんだか完全に力を抜いたほうが良いように思ってしまうます。
もちろん完全に脱力した状態や全力での「構え」などは論外であることはおわかりいただけると思います。
では、具体的にどれくらいの力の入れかたが適切なのでしょうか。
このことについても、実際のテニスの「構え」について調べた研究結果があるわけではないので、多方面からの情報を調べて統合的に意見を述べさせていただきます。
誰もがある程度は身体を安定させるように「構え」るはずです。
これを運動学的に言えば、関節を固定するように主導筋と拮抗筋が共収縮の状態にあるということです。
運動を始める直前、もしくは運動中であってもこのような共収縮が適切に発揮されなくてはならないはずです。
その割合は約20から30%です。
これくらいの軽い緊張を伴って「構え」ることが望ましいのです。
上肢に関しては、もう少し低い値で10から20%程度であると推測されます。
しかし、20%の力で「構え」るようにといっても、よくわかりません。
グリップについて言えば、我々の実験では「支えるように」という指示がもっとも適した「構え」を作ると考えられました。
このことから、同じような感覚が良い「構え」の力の入れ具合作ると考えられるので、ここでは支える感覚で「構え」ると言ってしまいたいと思います。
だらっと構えるでもなく、ふんばって構えるでもなく、上体の前傾を軽く両足、膝で支えるような感覚、上腕でラケットと前腕を支えるようにそっとさしだす感覚、そして支えるようにラケットを持つ感覚が良い「構え」を作る条件なのです。
能は静止していても回転している独楽が静止してみえるように、内側に大きな緊張力がこもっているといわれます。
テニスの「構え」では、大きな筋の緊張力を必要をすることはありませんが、少なくとも適切な筋肉の緊張とともに、気合いも含めた精神的な緊張感は優れた「構え」をつくるのには必要なのです。
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2009年04月18日
構えを科学する-6- (1600)
テニスの科学(54)
-膝は深く曲げる、は間違い-
「構え」の中心は腰であるといわれ、腰は文字どおり体の要であり、テニスおいても身体のひねりを産み出す大変重要な身体部位です。
この腰のひねり動作を容易にするためにもやや重心を低めに落とすことが大切になります。
そのためには膝を曲げることが重要になってきますが、この膝の関節角度については、曲げすぎても伸ばしすぎても動きのスピードは鈍ることが示されています。
パワーの面から考えると、130度から160度くらいの間で膝を曲げることが望ましいといえます。
ただ、前方に平行に膝を曲げると尻の落ちた姿勢になりやすく、すばやく運動を起こすことができません。
そのためにやや外交に曲げることが肝要になります。
ただ、この外向角度については確かな知見は得られていません。
膝の内側の緊張を感じつつやや外向といったところでしょうか。
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2009年04月16日
構えを科学する-5- (1598)
テニスの科学(53)
-腕はリラックスして構える-
当然、前傾が強すぎたりして、つま先よりに重心が掛かりすぎていても良くないことはわかります。
また、前傾姿勢を作るとき、両腕を前方に大きく突き出せば重心位置は前方になるので、60%の位置に重心を持ってくることも可能です。
しかし、それではテイクバックが遅れてしまいます。
何度も言っているように、上肢に関する動きでもっとも重要なのが肘なので、この肘が後方にもっともすばやく引きやすい位置に準備しておかなくてはなりません。
そのために、肘は身体の前傾に合わせるのではなく、やや力を抜いて重力方向、つまり地面に向かって楽に降ろすようにかまえることが肝心です。
武道の世界では「沈肩墜肘」といって、文字通り、肩を沈めて肘を下げる構えが重視されます。
これはすばやい動きと力強い動きを両立させるためには必要な構えなのです。
また、肘の動きを容易にすばやく行うことができるように、手首を強く曲げたりして構えてはいけません。
そのことによって過度の緊張を生み、すばやくテイクバックすることができないからです。
また、両腕を同時に動かすことによって、姿勢の安定を図ることができることがわかっています。
スプリットステップを行うとき、両腕は同時に動かすようにしたほうが良いです。
そうすればジャンプ動作を行いながらでも、身体の前傾姿勢を安定的に保持して着地後のすばやいターン動作を可能にすることができます。
さあ、これで、身体の前傾によって良い「構え」ができることがわかりましたが、では、その深さについてはどうでしょうか。
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2009年04月15日
構えを科学する-4- (1597)
テニスの科学(52)
-ふんばって構えても良いことなどない-
では、足は地面につけたままで構えることは良い「構え」であることについて考察しておきましょう。
いくら安定した「構え」が良いといっても、いわゆるふんばって構えてもよいのかという疑問が残ります。
もし、そうであるならば、相撲のようにしこ踏みの状態で「構え」ることが良いことになります。
これでは俊敏な動きができないことは容易に想像できます。
では、テニスの「構え」に必要な安定した「構え」とはどのようなものでしょう。
それは、ひとことでいえば、もっとも不安定な安定状態とも言うべきもので、ちょっとしたことで安定が崩れてしまう限界点での安定状態で「構え」るということです。
具体的には、足の長さを100%として、かかとの位置から60%の位置に重心位置がくるように前傾した状態がその限界点であるといわれています。
要するに、ちょっとしたことで身体が動きだせるように前傾を保って「構え」ることが良い、ということですね。
かかと寄りに重心位置を持ってきて安定した姿勢で構えてはいけないということになります。
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2009年04月12日
構えを科学する-3- (1594)
テニスの科学(51)
-かかとはあげて構えたほうが良いか-
よく「軽くかかとをあげて構えるように。」と指導される場合があります。
私もテニスを習いはじめのころ、かかとをあげないで構えていて、先輩から、
「なんてだらしない構えだ!」
とお叱りを受けた記憶があります。
また、トレーニング法としてもかかとをあげて歩くことが良いといわれ、そのための特別な靴も市販されているので、何となくかかとをあげて構えることが良い「構え」であるように感じているものです。
個人的ではありますが、漫画のドカベンで山田太郎が電車の中でかかとをつけないトレーニングをしているのを読んで、少しの間試したことがあります。
結構きついトレーニングであったような気がします。
このように、トレーニングや日常の健康を維持するためにはかかとをあげて歩くことや動くことは効果があることが知られています。
しかし、かかとをあげて構えることがすばやい動きにつながるかどうかは確かではありません。
そこで幾つかの文献を整理してみると、陸上のように直線的に動くことに限られる運動についてはそれほど問題はありませんが、テニスのように相手の打球に応じて、前後左右に瞬間的に動かなければならないスポーツではかかとをあげて構えることはどうもあまり良くないようです。
かかとをあげてつま先立ちでいると、反応時間が遅れるという実験結果があります。
この理由については考察が深くまで進んでいませんが、つま先立ちという不安定な状態では身体の安定を図るために、姿勢保持のプログラムが大きく働くために次の瞬時の動きに対して反応が遅れるのではないかと言われています。
つまり、不安定な状態で「構え」ることは姿勢保持のために脳が積極的に使われ、次の動作変化への切り替えが遅くなるということなのです。
つま先立ちと足を地面につけた状態ではどちらが安定しているかはいわなくてもわかると思います。
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2009年04月08日
構えを科学する-2- (1590)
テニスの科学(50)
能では基本となる「カマエ」というただ舞台に立っている行為で、周りの空気の動き、緊迫感を醸し出さねばならないそうです。
そのためにはいわゆる「形」や「型」はほとんど関係なく、身体である特殊な状態を作ることだといわれています。
この身体で作り出す特殊な状態とは何なのか、それこそがいわゆる正しい「構え」につながると思います。
しかし、それは現代のスポーツ科学をもってしても解明はできません。
少し経験のあるテニスプレーヤーなら、あるプレーヤーを見たとき、
「むむっ、こいつはできるな」
と感じることがあるし、経験あるコーチならぱっとみただけである程度その人のテニスの技量を推し量ることができます。
このとき、そのひとの姿勢とか表情とかも参考になるし、さらにいえば話し方や呼吸も「構え」を作る元とになっています。
つまり、膨大な情報をもとにして、そのプレーヤーの「質」の状態を探っていることになるのです。
そして、極めて優れたパフォーマンスを示すことができる段階まで能力を高めることができたとき、人はその動きに「美」を感じます。
「美」を形成する要素として、動きの「正確性」、「流動性」、「リズム」、「力動性」、「調和」をあげることができるといわれます。
それを数値に置き換えることがどれ程大変なことであるかおわかりになるでしょう。
あえて言えば、素晴らしい絵画を客観的な数値に置き換えて、その数値が高いほど良い絵であると判断するようなもので、そんなことは不可能です。
しかし、「構え」という身体運動に関係するいくつかの知見は得られているので、その知見をもとに良い「構え」というものを探っていくことにします。
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2009年04月05日
構えを科学する-1- (1587)
テニスの科学(49)
テニスにはレシーブの「構え」だけではなく、いろいろな「構え」があります。
サービスの「構え」
とか、
チェンジコートで休むときの「構え」
などです。
しかし、いったい「構え」とはなんでしょうか。
よく私たちは、
「こいつは良いリターンをしそうな構えだ」
とか、
「構えがすばやいので安定したストロークが打てる」
などと言います。
もちろん私たち目にしてきたのは、そのような素晴らしい「構え」だけではなく、とんでもなくユニークな「構え」もあります。
例えば、
ゴルフのパッティングにも見られるような、両肘を左右に大きく広げていかにも相手を威嚇しているような構えとか(そんなことでは威嚇になりませんよ、かえって相手を安心させるようなものです、と言ってあげたくなります。)、
マッケンロー(知っていますよね)よろしく両手をダラーンと下げて構えている人とか(こういう人に限って、スプリットステップを行ったときでもラケットを上方へ持ちあげないので、ヘッドが完全に下がって打球してアウトばかりだったりするのですが。)、
両手を完全に離して体の脇に構える人もいるのです。
しかし、このようなユニークな「構え」が果たして本当に悪い「構え」だと言えるのでしょうか。
そして、このようなとき、あまりカッコ良くはないけれど、その人が好きでやっているんだし、きっとその人にとっては良い構えなんだと割り切ってしまうことが多いのではないでしょうか。
この問題を解決するには、正しい合理的な「構え」とは何かを理解しなくてはなりません。
その「構え」にスポットをあてて解明していこうと思います。
これは非常に骨のおれる仕事です。
なぜなら「構え」とういうのは単にフォームを意味するのではなく、試合に対する「構え」など精神的な「心構え」をさすこともあるからです。
身体的な意味での「構え」をとってみても、そこには「美的な判断」も存在することが科学的な解明を困難にしています。
つまり、「構え」を評価するとき、その時の力や関節角度を測定なければわからない、というものではないのです。
科学的な手法を用いて客観的に数値に置き換えるのは困難な仕事なのです。
その困難な仕事に敢えて挑むのですが、まずは日本の伝統芸術や武道においてはどのように「構え」を捉えているのか見ていくことにします。
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2009年04月04日
楽しく体を鍛えていく方法-6- (1586)
テニスの科学(48)
その3は、前腕のトレーニングです。
ラケットコントロールなどを上手く行なうことが出来る人は、前腕の動き、特に回内の動きが上手い人です。
しかし、日常の動作の中ではあまり回内を使う動作が無くなってきているので、これもレッスン中にトレーニングしてしまいましょう。
非常に簡単で、いわゆる「雑きん絞り」をします。
もし、毎日バケツに水を汲んで、拭き掃除をしているというのなら特別トレーニングをする必要も無いのですが、そうでなければぜひとも行なっていただきたいトレーニングです。
ただし、本当に雑きんを持ち出して、拭き掃除をしなさい、というのではありません。
ラケットを使って、雑きんを絞るように、両手の前腕の回内動作を強化するのです。
ラケットを雑きんと見立ててぎゅっと絞る、それだけでトレーニング効果が期待できるのです。
もちろん若干の注意事項があります。
一つはラケットを手のひら全体で包み込むようには握らないで、指で握る感覚で握ってもらいということです。
そして、その時、出来るだけ肩の力は抜いておくということを忘れないで行なってほしい。
これならば、いつでも出来ます。
しかし、グリップがこすれて早く傷むかもしれないので、グリップテープの替えは大目に準備しておいた方がよいかもしれません。
誰でも簡単に、しかもレッスン中に出来るトレーニング方法を紹介しました。
是非行なってみてください。
少なからず効果があるはずです。
少しでも上手くなりたければ、やはりトレーニングが必要です。
しかし、楽しみながらやれることが重要で、やりたくも無いことを無理やりやっても効果は期待出来ません。
多くの人が、楽しみながら実践していただけることを願っています。
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2009年03月28日
楽しく体を鍛えていく方法-5- (1579)
テニスの科学(47)
その2は、脚の内側の筋肉を鍛えることです。
膝の使い方の特集でも触れましたが、膝の内旋を上手く使うことが良い動きのためには必要であり、そのためには脚の内側の筋肉をある程度鍛える必要があります。
そのトレーニングも大変に簡単です。
膝と膝の間にボールを挟んで両側からボールをつぶすように力を加えることを何度か繰り返すだけです。
コーチの説明を受けている時間などを利用して、行なうのが良いと思います。
その場合も、若干の注意事項があります。
まずは、膝の内側の最も固い箇所にボールを挟むことです。
その位置にボールを挟んだら、膝を少し曲げて力を加えてください。
膝が伸びた状態では上手く力を加えることが出来ません。
この姿勢は、いわゆる「棒立ち」初心者のフットワーク矯正にも役立つかもしれないので、初心者から上級者まで有効に活用できるトレーニング方法です。
ただし、あまり、コーチの目の前でやるとひんしゅくを買うかもしれないし、少しカッコ悪いのが難点といえば難点です。
もし、レッスン中に出来なければ自宅に帰って、テニスボールよりも少し大きめの、子どもが使うゴムのボールを利用して行なうことが望ましいです。
これならば、人目を気にすることもないし、ねころびながら、テレビを見ながらだって出来るので、ながら族(古い!)にはもってこいのトレーニング方法です。
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2009年03月26日
楽しく体を鍛えていく方法-4- (1577)
テニスの科学(46)
<レッスン中に出来る身体トレーニング1>
その1は、歩行のトレーニングです。
「足は第2の心臓」といわれるように、うっ血しがちな血流を足の筋肉のポンプ作用によって押し戻し、心臓の負担を軽くするとともに、全身の血液の流れを調整するという大切な役目を担っています。
この働きが悪くなると、心臓を含めた循環器系の働きが悪くなり、疲労しやすくなることで、全体の動きがぎこちなくなってしまいます。
つまり、健康だけではなく、テニスの技術にも重大な影響を及ぼすことになるのです。
そこで、運動不足の人や体力が衰えはじめる中高年の方に実践していただきたいのが歩行の訓練です。
何も難しいことではありません。
ボールを打って、ラインの後ろに並ぶときなどにゆっくりと歩くだけです。
ただし、ただ歩くだけではトレーニングとしての効果はないのは当然です。
まずは、かかとから地面につくように歩くことです。
その時少し足先を持ち上げるようにしてやる方が良いですね。
そうすると、筋肉の動く範囲が大きくなり、ポンプ作用を促進するとともに、ストレッチ効果が期待でき疲労しにくいという効果もあります。
また、ふくらはぎの方だけではなく、すねの部分の筋肉も十分に動かしてやる必要があります。
少し足先を持ち上げるようにするのはそのためです。
これだけではありません。
足が地面から離れるときに、指先で強く地面を蹴るようにすることです。
そうすることは、ふくらはぎやすねの筋肉を十分に動かすだけではなく、指の機能を高めることにもなるので、足裏の疲労回復やアーチの形成にも役立って、まさに一石二鳥です。
よく、運動量を増すために走ってラインに並ばせることがありますが、ボールを打った直後は素早くコートから離れ、後はゆっくりと、しかし力強く歩くことが良い身体トレーニングになります。
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2009年03月24日
楽しく体を鍛えていく方法-3- (1575)
テニスの科学(45)
<レッスン中に出来るメンタルトレーニング>
さて、次はレッスン中に行なうことが出来るメンタルトレーニングを紹介しましょう。
その1は、集中力を養うとともに、コントロール性を高めるのに効果がある方法です。
非常に単純な方法です。
ターゲットを設定して、そこを狙うだけです。
ただし、反対側コートにターゲットを設定するのではなく、ネットの上に仮想のターゲットを思い描き、そこを狙って打つ練習をします。
よくあるパターンは、反対側コートに目標を設定する場合ですが、確かにこの方法でもコントロール性を高めるのに効果はあります。
しかし、目標が近くに設定される場合に集中力が高まり、コントロール性も高まることが知られています。
また、ネット上にターゲットを思い描くのにも集中力を要するので大変効果が高いです。
その2は、出来るだけリラックスすることです。
多くのテニススクールでは、一度に多くの人がプレーをするので、ドリル練習などでも順番待ちの時間がかなりあります。
その時間を利用して、リラックスするための訓練をします。
リラックスするための第1段階として、立つことを意識してください。
多くの人は立つことなど意識することはないと思わますが、ちょっと意識を向けてやると、いかに力を入れて立っているのかということがわかるはずです。
知らず知らずのうちに緊張して、それが習慣化してしまっているのです。
そうすると筋肉はだんだんと柔軟性を失い、動きがぎこちなくなったり、疲れやすくなったりします。
つまり、楽に良い動きをするためには力を抜いてやることが重要なのです。
具体的な方法は、まず足を肩幅に開きます。
骨盤の幅に立つといった方が正しいです。
そうすると、体重を骨で支えることが可能になり、筋肉に対する負担が減ります。
そうしたら、次に太股の前面の筋肉を緩めるように努力してください。
バランスが少しでもくずれると力が入ってしまうので、けっこう集中力がいります。
それができたら、足の裏の感覚に意識を向けて、かかとと母指球に力を感じながら、足裏全体がベターっと広く地面を捉える感覚を味わってください。
これだけでずいぶんリラックス感を味わうことができます。
さらに出来れば腹式の呼吸を、呼気を中心にゆっくり行ない、全身の力を抜くようにすることが望ましいですね。
良い動きを生み出すためにはリラックスして力を抜くことが大切なので、意外な程よく効くトレーニング方法なので是非お試しください。
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2009年03月23日
楽しく体を鍛えていく方法-2- (1574)
テニスの科学(44)
1.ウォーミングアップは立派なトレーニングである。
レッスンの前にはほとんどのテニススクールではウォーミングアップを行なうはずです。
しかし、その様子を見ていると、実に中途半端なものが多いと思います。
指導者の反論も分かります。
その反論はこうです。
「ウォーミングアップにかける十分な時間が無い!」
確かに、ウォーミングアップに30分もかけていてはスクールはつぶれてしまいます。
しかし、ウォーミングアップをしなければ何か障害が起こったときに、運営責任を追及されかねないので、仕方なく適当にストレッチをして良しとしているのが現状なのです。
また、研究者サイドにも問題があります。
このような現状を考慮しないで、やれ筋温を高めるためにはそれなりの時間がかかるだの、ストレッチは全身にわたってくまなく行なうとともに、一つのストレッチに十分な時間をかけるべきであるなどという主張を繰り返しているからです。
これでは、現場で役に立つトレーニング理論など構築しようがないですね。
ここでは、障害を防止し、短時間で効果のあがるウォーミングアップの方法を紹介したいと思います。
まずは、テニスではどの部位に障害が多く発生するのかを明らかにしなければなりません。
ウォーミングアップの最大の目的は障害防止にあるのですから、これを踏まえていないと話が先に進みません。
テニスで起こる障害というと、真っ先に思い浮かぶのがテニスエルボーです。
従って、肘や腕の障害が多いと思われがちですが、実は肩と腰の障害が最も多いという報告があります。
プレーヤーのレベルや、施設環境によっても異なるので一概に言えない部分もありますが、実際に指導に携わってみると、肩、腰の障害を訴える生徒さんが多いことに驚かされます。
もちろん、肘の障害も多く、その次に足首です。
さあ、これでテニスで起こる障害の部位がはっきりしました。
肩、腰、肘、足首です。
ウォーミングアップにかける時間が十分に無いのですから、これらの部位を重点的にウォーミングアップを行なうほうが良いと思います。
それぞれの部位に効果的なウォーミングアップの方法をひとつづつ紹介しましょう。
<肩>
右手を下に、左手を上にするように手首のところで交差するように両手を前に突き出します。
そうしたら、右手は上に押すように、左手は下に押すように全力で力を6秒間加えます。
次に手を上下変えて同じく6秒間全力で力を加えます。
<腰>
足を肩幅くらいに開いて、全身の力、特に太股の前あたりの筋肉を十分に緩めて立ちます。
そうしたら、息を吐きながら肩を水平にゆっくり限界点まで捻ります。
息が続く限り行い、苦しくなったらゆっくり戻します。
<肘>
前腕を内側に捻り、そこから手首を90度の曲げます。
その形が出来たら、あいている方の手で、手首の角度を固定しつつ、さらに腕を捻ります。
これで、多くのテニスエルボーの原因となっている筋肉が十分に伸ばされるはずです。
テニス肘で苦しんでいる人は多いので、この項目についてはもう一つ紹介しましょう。
それは、指をストレッチすることです。
両手の指先を合わせて、各指の間を十分広げて、お互いの指を押し合います。
その時、肘の高さを肩の高さまで上げておきます。
<足首>
足を肩幅くらいに開いて、全身の力、特に太股の前あたりの筋肉を十分に緩めて立つのは腰の運動と同じです。
次に足の裏を合わせるように足首を外側に捻ります。
その時、少しお尻を後方にひいて、ややへっぴり腰のような姿勢を取るのがコツです。
捻挫をした時に傷めるくるぶし周りの腱や筋肉が伸ばされる感覚が理解できるはずです。
以上にあげた運動を取り入れ、あまりの時間で適当なストレッチや体操を組み合わせれば良いでしょう。
重要なのは、テニスで発生する障害の部位を認識することです。
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2009年03月22日
楽しく体を鍛えていく方法-1- (1573)
テニスの科学(43)
「もっと身体を鍛える」
テニスはもはや文化的なスポーツとして根づき、テニスが生活の一部となって、大いにテニスライフを満喫する人が増えているように思います。
しかし、その一方で、痛々しくテニスエルボーで痛む肘を抱えて、エルボーバンドなどで痛みを押さえつつプレーをする人や、足首のくるぶしまでも覆う固定用のサポーターをまいて足を引きずるようにテニスをする人も多く目にするようになってきました。
テニスのプレー頻度がますにつれて、障害も多くなってきているのです。
そんな時良く耳にするのが、
「あなたはトレーニング不足だから、もっと真剣にトレーニングしてください。」
というコーチの叫びです。
そう叫びたい気持ちも分からないではないが、そう叫ぶコーチが腰痛を抱え、テニスエルボーで苦しんでいる姿はなんとしたものでしょうか。
確かに、競技選手のためのトレーニングだけではなく、障害を防ぎ、生涯スポーツとしてテニスを楽しむためにもトレーニングは必要です。
しかし、そんな一般の人たちが日常的にトレーニングは行なうことはそれほどたやすいことではありません。
最も大きな問題は、やる気が無いこと、次にトレーニングジムのような器具が無いとトレーニングできない、専門のトレーナーがいないとトレーニングが出来ないと思い込んでいる人が大変多いことです。
たしかに、多くのトレーニング理論では、そのような器具やマシンを利用したトレーニングの効用を説く場合が多いですね。
しかし、もっと身近で日常的にトレーニングをする習慣が身につかなければ障害を防ぎ、快適なテニスライフを送ることは出来ないのです。
そこで、身近で出来るトレーニング方法を解説し、豊かなテニスライフに貢献してみたいと思います。
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2009年03月20日
グリップの違いで何が変わる-7- (1571)
テニスの科学(42)
このようにグリップが全身の動きに及ぼす影響を見てくると、少なからず影響を及ぼすものの指導書にあるような大きな違いは見られません。
ゴルフの実験結果でも3種類のグリップ(オーバーラッピング、インターロッキング、テンフィンガーグリッピ)について検討した結果、クラブフェースの方向性やスピードなどに対する影響は観察されず、グリップの形は問題でないように考えられています。
しかし、このような微妙な違いが人間の特長で、その微妙さが個人の骨格や体格、筋力等の身体的な要素のみならず、考え方や好みといったメンタル的な要素をも含んで、感覚を頼りに形成されてくるものであると言えます。
また、上級者はグリップの違いを上肢の動きで吸収(?)して、下半身の動きに伝わらないように身体の動きを調節しています。
このような自動化された動きが良いパフォーマンスには必要で、このような感覚をトレーニングする必要があると思います。
今回の実験結果やこれまでの研究だけでは人間にとってもっとも自然なグリップとはなにかという問いに対して結論は導きだせませんでしたが、初心者であっても無意識的に自分の感覚に従ってグリップを自分がもっとも握りやすいように握るわけで、それをはじめから無理に矯正するべきではないという結論を支持することになりました。
ただ、これは観察だけの結果です、幼児に異なるグリップでボールを打球させてみると、意外にもフルウェスタングリップがもっともスイング動作がスムースで安定しており、その結果大変に良いボールが打球できる確率が高いことが確認されています。
最近のプレーヤーは小さい頃からテニスを始めるケースが圧倒的に多く、その時、何も考えずにラケットを握っていたのがそのまま自分のグリップとなったというケースが多いと考えられます。
そう考えると、今これだけウェスタン系のグリップが多いのは、フルウェスタンのグリップは決して特別なグリップではなく、実は最も自然なグリップである可能性も否定できないのです。
これについても今後の研究を待たなくてはなりませんが、指導者として、注意深く観察して、より適切なグリップを指導できるように努力していかなくてはならないと思います。
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2009年03月17日
グリップの違いで何が変わる-6- (1568)
テニスの科学(41)
4.インパクトでの手首や肘の角度が変わる
これらの関節角度については、グリップの違いが直接的に影響を及ぼすので、少なからず違いが見られます。
特にウェスタン系のグリップでは脇が締まり、肘や手首が強く曲がる傾向が見られています。
今回の実験の被験者はみなイースタングリップを本来のグリップとしていたので、逆に考えると、自由度の大きい上肢の関節角度を調節して、その違いを上肢の動きで吸収してできるだけ体幹や下肢の動きに影響を及ぼさないようにしていたのだと考えることができます。
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2009年03月15日
グリップの違いで何が変わる-5- (1566)
テニスの科学(40)
3.スイングの方向が変わる
インパクト位置では、高さに違いが見られると書きましたが、それはトップスピンを打とうと無意識的に身体を動かした結果です。
当然、スイングの方向もウェスタン系は下から上へのスイングになりやすいということです。
しかし、これも上級者にはウェスタン系のグリップはトップスピンで打つという意識や知識が習得されていることが少なからず影響していると思われます。
実際のレッスンでは、中年の主婦などが厚いグリップで器用にスライスを打っているのに驚かされることがあります。
その場合のスイングは当然上から下へのスイングになっていて、一概に厚いグリップが下から上への方向を規定するとは言い難いと思います。
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2009年03月08日
グリップの違いで何が変わる-4- (1599)
テニスの科学(39)
2.身体の向きが変わる
上空からのカメラで捉えた両肩とネットがなす角度や上腕との角度などを調べて身体の開き具合(どれくらいネットの方を向いているか、どれくらい胸を開いて打っているかなどから身体の開き具合を調べた)をみると、どのグリップでもそれほど大きな違いは見られません。
これについては、関節の角度とパワーとの関係を調べた研究がひとつの示唆を与えてくれると思います。
これらの研究では、すべての関節において、ある関節の角度でもっともパワーが高くなることが知られています。
特に上腕と肩のなす角度は体幹のパワーを上腕に伝達するために大変に重要です。
そこで、上級者のレベルになると、たとえグリップが違っても、もっともパワーの出やすい角度を身体が覚えていて無意識のうちにその角度になるように調節するのです。
卓球においても、持ち方の違いがこの角度に影響を及ぼさないことが確認されています。
ただ、今回の実験では、ウェスタン系では肩が大きく傾くことが観察されています。
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2009年03月07日
グリップの違いで何が変わる-3- (1598)
テニスの科学(38)
今回は、3名の上級者によってフォアハンドストロークにおけるグリップの違いによる影響を調べてみました。
それが、すべてのケースや、初心者などのレベルの違いに関して言及するものではありませんが、ひとつの傾向を見ることはできると思います。
その結果について順に見ていきます。
1.インパクト位置が違う
グリップの違いよってインパクト位置は異なります。
しかし、前後方向や左右方向については違いが見られず、高さのみに違いが見られました。
ウェスタン系のグリップではインパクトの位置が低くなります。
これは、トップスピンをかけようと自然と下から上へのスイングを意識するからだと思われます。
前後方向にも違いがあるのではないかと予想していましたが、この予想は見事に裏切られました。
未発表資料ですが、上級者のサービスについてはグリップに違いがあっても、それほどインパクト位置に違いが無いことが確認されています。
たぶん上級者は、自分がもっとも打ちやすいインパクト位置を速やかに探して、それに対応するように動きを調節する能力が高いのだと思われます。
フォアハンドストロークについても同じように、上級者はそれまで自分が培ったインパクトの距離感を無意識のうちに調節すると考えられます。
初心者については、どのグリップでもインパクト位置は一定せず、一定の傾向は確認されていません。
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2009年03月04日
グリップの違いで何が変わる-2- (1595)
テニスの科学(37)
では、そのようなトップスピンの技術が必須であるならば、初心者や子どもにもその技術は教えなくてはならないはずです。
しかし、初心者や一般のジュニアのスクールで厚いウェスタン系のグリップを指導する場面はみたことがありません。
その理由をさきほどの指導書に探してみると、
「初心者(ジュニア)は、基本であるフラットから教えるべきである。」
「そのためには正しいコンチネンタルグリップ(イースタングリップ)を指導することが望ましい。」
と解説してある場合が多く、その理由として、
1.インパクトの感覚が覚えやすい
2.グリップに無理が無く、もっとも自然なグリップである
3.他の技術に応用がしやすい
4.早くラリーができるようになる
などとしています。
果たしてそれは本当なのでしょうか。
インパクトの感覚は、それぞれに適したグリップがあるわけで、初心者であっても無意識的に自分の感覚に従って自分がもっとも握りやすいようにグリップを握ると思われます。
それをはじめから矯正するべきではないのではないでしょうか。
コンチネンタル系のグリップがその人にとって良いグリップかどうかはわからないし、多くの人にあてはまるかどうかも定かではありません。
それが自然かどうかも分からないと思います。
それに、早くラリーができるようになるというのもかなり怪しい説のようにも思えます。
「では、どのグリップが人間にとって自然なのか。」
と問われると、返答に困ってしまうのも事実です。
グリップの違いがどう人間の全身的な運動に影響を及ぼすのかについて整理しながら、この難解な問題に私なりの解答を導きだしていこうと考えています。
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2009年03月01日
グリップの違いで何が変わる-1- (1592)
テニスの科学(36)
-人間にもっとも適したグリップは何か-
以前、人間の手の機能とその機能を最大限に生かすためにはどうしたら良いのかについて解説したことがあります。
その中で、いくつかの提案をしたわけですが、その中で「グリップを変えると全身の動きが変わる」ということを書きました。
確かに、手というのは高度の発達した感覚器官なので、そのわずかなずれによっても全身の動きに影響を及ぼすことが確かめられています。
また、写真やテレビでのプレーを観察していると、厚いグリップや薄いグリップによって動きの特長になんらかの共通性を見いだすことができます。
一般的に用いいられるグリップについて調べてみると、コンチネンタル、イースタン、セミウェスタン、フルウェスタン、と実に様々なグリップがあることが分かります。
また、グリップの違いによってどのような違いが生じるのかについても多くの解説があります。
それらを整理してみると、
1.インパクト位置が違う
2.身体の向きが変わる
3.スイングの方向が変わる
4.インパクトでの手首や肘の角度が変わる
が代表的なところです。
そして、それらの指導書では、おおむねトップスピンにはセミウェスタンやフルウェスタン(ウェスタン系)が適しており、フラットやスライス、ボレーなどのショットにはコンチネンタルやイースタン(コンチネンタル系)が適しているという解説が多いですね。
しかし、動きがグリップによって変わることは間違いありませんが、トップスピンを打つにはセミウェスタンかフルウェスタンでなければならいこともないし、実際に多くのトップ選手がそれほど厚くないグリップでトップスピンを打っているように思います。
好意的に解釈すれば、ハードトップスピンを打つにはウェスタン系のグリップがもっとも適しているということはいえるかもしれません。
最近のテニスでは、ヘビーなトップスピンを自在にコントロールすることはトッププレーヤーにとって必須の技術です。
それが自分のベースのストロークとなるかどうかは別として、少なくともパッシングや攻撃的なトップスピンロブなどでポイントをとるか有利な展開に持ち込むには、「ここぞ」というところでハードなトップスピンが打てなくてはトップに君臨することはできないと思われます。
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2009年02月27日
テニスのフットワーク -10- (1590)
テニスの科学(35)
◎正しいフットワークを身に付けるための4つのステップ
スタンスの研究をすすめてきた中で、今回の研究結果や他の研究結果、ならびに我々の指導経験から総合的に判断して、テニスに必要なフットワークを身に付けるために必要な、いくつかの視点がみえてきました。
それらを「4つのステップ」としてまとめてみました。
「ステップ1:軸足で正しく立つこと」
安定して立ち、ボールを待つということは、正しいタイミングをはかり、安定したスイング動作を生むためには必要不可欠なことです。
その際に、腰を軸足側に捻ることが、安定した待機姿勢を保つためは重要なポイントです。
また、ステップ足は軸足の後方に置き、どの方向へもステップ可能な準備姿勢を整えることが重要です。
「ステップ2:スクエア・スタンスで、かかとから踏み込む」
初心者には、スクエア・スタンスから習得させるのが良いと思います。
なぜなら、回転運動をすみやかに、タイミングよくおこなえない初心者にとって、正しいスイング動作を身に付けるためには、踏み込み足を伴って、並進運動から回転運動のスムースな移行を練習したほうが良いからです。
また、ステップをネット方向に踏み出すことは、インパクトの時間的な誤差が多少許され、適切なインパクトのタイミングを図れない初心者にとって、ボールコントロールを高めるために有利に働きます。
ただし、クローズ・スタンスでの打球は、スムースな回転運動を疎外する可能性もあると考えられるので、導入に際しては避けるべきだと考えます。
そして、つま先からの着地は回転運動を疎外するので決して行わないことに注意してほしいと思います。
「ステップ3:ユニット・ターン」
安定した待機姿勢を作るとともに、強い回転運動を生むために、腰や肩の捻りが必要です。
そのために、テイクバック期に肩と腰を同時に捻ること(ユニットターン)が重要です。
その際に、初級者や中級者は、どうしてもラケットや腕の動きに意識を向けがちであるが、腰に意識をおいておこなうことがポイントです。
また、ラケットを大きく引きすぎると、それだけ迅速な回転動作がおきにくくなるので、軽く肘から引くようにして、コンパクトなテイクバックを心掛けるべきです。
「ステップ4:オープン・スタンスーストローク最終形」
一流選手と同じ様に、オープン・スタンスで打つことは、ストローク動作の目標です。
1から3のステップがほぼクリアできた(すなわち、ユニット・ターンやスムースな回転動作が無意識にできるとともに、適切なインパクトのタイミングを図ることができ、あらゆる方向に移動した場合でも、軸足で正しく安定して立つことができる)なら、できるだけ早期にトライすべきです。
その場合に、自分が「速い」と感じるスピードのボールに対して練習することをすすめます。
なぜなら、オープン・スタンスは、速いボールに対して、素早く対応することができるスタンスであり、できるだけ、短時間にユニットターンをおこない、素早い準備動作と回転動作を身に付けるための練習が必要だからです。
また、コート・カバーリングの素早さも、オープン・スタンスの大きな特徴であるので、テンポ速く左右に打ち出されたボールに対して打球する練習も導入する必要だと思います。
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2009年02月25日
テニスのフットワーク -9- (1588)
テニスの科学(34)
◎ユニット・ターン
身体の捻りとスタンスは大きな関係があると述べました。
そこで、動作解析の結果から、特に、腰と肩の捻りについてみてみることにします。
各スタンスにおける肩関節と腰関節の角度変位を調べました。
肩関節角度は、両肩を結んだ線とネットのなす角度、腰関節角度は両腰を結んだ線とネットのなす角度で、両角度とも上方からみた角度です。
まず、角度変位に着目してみると、上級者は、インパクト直前まで肩関節角度と腰関節角度に大きな差はみられません。
それに対して、初級者と中級者は、肩関節角度は大きな変位を示しているものの、腰関節角度の変位が小さいことがわかりました。
このことは、上級者は、インパクト直前まで、肩も腰も同じ様に十分に捻っているのに対して、初級者、中級者は、腰の捻りが十分でないことを示しています。
特に、初級者のオープンでは、肩関節角度の変位が小さく(肩を十分に捻っている)なっているのに対して、腰関節角度は変位変動がほとんどない(腰を十分に捻っていない)ことが示されました。
初心者は、身体の捻り(特に、腰の捻り)が少なく、ネットに正対してインパクトを迎えることが多く観察されるとの報告もあり、この結果は、これらの報告と一致します。
安定したスイング動作のためには、軸足で正しく立つことが重要であると述べましたが、片足で安定して立つためには、腰をわずかに外側に捻る(軸足側に捻るといった方が良いかもしれない)ほうが良いと思われます。
上級者は安定した待機姿勢を保つために、腰の捻りを行っていると考えられます。
それに対して初級者、中級者は腰の捻りが十分でないので、安定して立つことができません。
特に、オープンでは、両足をネットに対して平行に近い形でスイング動作を行うので、腰を十分に捻ることができない初級者、中級者は、軸足に正しく立つことができないのです。
また、安定した待機姿勢を作るとともに、強い回転運動を生むために、腰の捻りが重要になってくるのは当然のことです。
そのためには、肩と腰を同時に捻る必要があります。
これは、ユニット・ターンやボディ・ターンといわれるもので、その重要性は多くのコーチが指摘しており、ジャック・グロッペル博士も、その研究データからユニット・ターンの重要性を指摘しています。
次に、角速度についてみると、上級者は、インパクト直前からインパクトにかけて、肩関節角速度が急激に増加し、増加の途中でインパクトを迎えています。
それに対して、初級者と中級者の肩関節角速度は、インパクト直前にピークがあり、速度が衰えながらインパクトを迎えていることが示されています。
初級者と中級者では、腰の捻りが十分でなく、また、腰の回転のパワーを肩の回転のパワーに結び付けることができないと考えられます。
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2009年02月22日
テニスのフットワーク -8- (1585)
テニスの科学(33)
◎踏み込み足はかかとから
次に、スタンスの違いがインパクト位置にどう影響するのかに興味を持ちました。
スタンスが違えば、当然、インパクト位置にも違いがあらわれるであろうと考えたからです。
インパクト位置をみると、初級者は、中級者と上級者とは明らかに違いがあることが示されています。
中級者と上級者は、各スタンスにおけるインパクト位置に違いがないのに対して、初級者は、ばらつきがみられ、インパクト位置が身体に近いことがわかります。
テニスのフォアハンド・ストロークでは、体に対する足の位置や、前足の向きがボールの方向を決めるという報告があります。
また、この初級者は踏み込み足のつま先が内側(時計の正方向)に屈曲されたまま、かつ、つま先から着地してスイング動作を行うことが観察されています。
つま先を屈曲したまま着地することは、腰の回転を制限することになり、並進運動の次に行われる回転運動がスムースに行われなくなります。
そのために、初級者では左右腰の角度がネットに対して、直角に近くなり、インパクト位置が身体に近くなったのです。
踏み込み足のつま先を内側に屈曲させたまま、つま先から着地して打球してみてください。
身体の回転がスムースに行われず、非常に窮屈な感じで打たなければならないことがわかると思います。
また、一流選手が踏み込んで打っている写真をみればわかりますが、ほとんどの場合、つま先の内側への屈曲は行われず、つま先ではなくかかとから踏み込んで打っています。
それによって次の回転運動をリズミカルに、スムースに行うことができるのです。
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2009年02月21日
テニスのフットワーク -7- (1584)
テニスの科学(32)
◎タイミングを正しく合わせるためには、安定して立つこと
オープンスタンスは、インパクトのタイミングを合わせるのが難しいスタンスである、と書きましが、インパクトのタイミングについて、左右足の着地からインパクトまでの時間と、膝関節の角度変位の分析データを参考にしながら考察をすすめてみます。
スタンディング・ショットについて、各スタンスにおける左右足の着地からインパクトまでの時間を調べました
このデータをみると、技術レベルがあがるにつれて、右足(つまり軸足)の着地からインパクトまでの時間が全体的に長くなっていることがわかります。
これは、何を意味しているのかというと、上級者ほど、軸足で長く安定して立てるということです。
このことを確認するために、膝関節の角度変位の分析結果をみてみます。
右膝の角度変位をインパクトまでをしらべました。
これをみると、特に初級者については、オープンにおける角度変位の様相が、クローズとスクエアに比べて異なっていることがわかります。
正のピーク値(山の尖がり)の現れるのがインパクトに近く、その立ちあがりも急です。
つまり、急激に膝の屈伸運動を行っているのです。
中級者は、変位の幅は大きい(膝を大きく曲げ伸ばししている)ものの、膝の曲げ伸ばしが緩やかであり、スタンスによる違いはあまりみられません。
また、上級者は、すべてのスタンスにおいて、インパクト直前までの変位が少なく、約130度で推移しています。
初級者と、中級者が大きな変位を示したのとは対照的です。
上級者は、右足の着地が早いにもかかわらず、その変動が少なく、非常に安定して立っていることがうかがえます。
安定して立ち、ボールを待つということは、正しいタイミングをはかり、安定したスイング動作を生むためには必要不可欠なことです。
上級者は、そのための身体の動きや調整力を身に付けていると考えて良いと思います。
しかしながら、そのように訓練された上級者であっても、ランニングショットにおける、オープンでの打球では、コントロールにばらつきがみられます。
また、右足着地から左足着地までの時間も、右足着地からインパクトまでの時間も、オープンが最も短かかったです。
オープンは、踏み込む時間を節約して、すぐに回転動作に結び付けるための技術なので、軸足のセッティングもステップ動作の切り替えも素早く行われなければなりません。
このことからわかるように、オープンスタンスはそれなりに難しい技術であるといえます。
しかし、オープンスタンスはスイングのターン時間(全スイング動作にかかる時間)もリターン時間(走り出して、打球し、もとのポジションまで戻る時間)もクローズに比べて短いこと、また、相手の速い打球に対して、身体の捻りを大きくとらなくても打球することが可能であるなど、上級者が高いレベルでの試合に勝つためには、習得しなければならない技術であることは明白です。
どの段階で、どのような練習に取り組むのかというヒントが必要です。
また、上級者のクローズにおいて、インパクトに向かって右膝が屈曲していくという、他のスタンスと違う動作がみられます。
これは、踏み込み幅の大きいクローズにおいては、上半身が前のめりにならないように右足を左足の方向に寄せて、スムースな回転動作が行われるように調整していると考えられます。
踏み込み幅が大きい場合に、安定した回転動作、スイング動作を行うために必要なことなのかもしれません。
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2009年02月19日
テニスのフットワーク -6- (1582)
テニスの科学(31)
◎ボールの打球コースに差がある
各スタンスにおけるボール打球コースをみると、特徴的な傾向がみられます。
まず、スタンディング・ショットについて、初級者と中級者のオープンスタンスでは、左コース(被験者は全員右利きです)に打球される割合が高く、約40%が打球されています。
テニスのストローク動作は、並進(直線)運動と回転運動から構成されます。
この並進(直線)運動は、体に勢いを持たせるとともに、続く回転運動をリズミカルに行うための導入的役割を担います。
また、ラケット面を打球したい方向へ長く移動させることができるので、インパクトの誤差が少なくなります。
オープンスタンスでは、スクエアスタンスやクローズスタンスに比べて、打球したい方向に足を踏み込まないために、身体の並進(直線)運動が少なく、回転運動が主な身体動作になります。
そのために、上級者に比べて、インパクトのタイミングを適切に合わせることができない初級者と中級者では、左コースに多く打球されたのだと考えられます。
特に、スタンディング・ショットでは、身体の移動を伴わないために、その傾向が顕著に現れました。
ランニング・ショットについて、上級者でもオープンスタンスにおけるコースのばらつきが顕著でした。
オープンスタンスは、上級者であっても、移動して、タイミングを適切に合わせるのが困難であることを示しています。
オープンスタンスはインパクトのタイミングを合わせるのが難しいスタンスであると言えます。
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2009年02月17日
テニスのフットワーク -5- (1580)
テニスの科学(30)
◎スタンスの違いによるボールコントロール得点に差はない
各スタンスにおけるボールコントロール得点の結果をみると、初級者において、すべてのスタンスで、ランニング・ショットよりもスタンディング・ショットの得点が高い傾向が若干みられるほかは、特徴的な傾向を読み取ることはできません。
スタンディング・ショットよりもランニング・ショットの方が高いフットワークの能力が要求されるのは当然のことであり、初級者ではランニング・ショットに対するフットワークの能力が備わっていないということができます。
しかし、スタンスの違いによる差は見い出すことはできません。
中級者と上級者は、どのスタンスで打球したとしても、ボールコントロールにそれほど差はないのに対して、初級者ではスクエアとクローズのほうが、オープンに比べて高い得点を示すと予想していたので、この結果は意外でした。
この結果をみる限り、スタンスが違ってもボールコントロールには差はないということができます。
しかし、得点だけでは、ボールコントロールを評価することができないと考え、ボールの打球コースを調べてみることにしました。
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2009年02月14日
テニスのフットワーク -4- (1577)
テニスの科学(29)
世界のトッププレーヤーとして数々の実績を残したマイケル・チャンという選手がいます。
テニスプレーヤーにしては小柄で、体格的に劣るマイケル・チャンが世界のトッププレーヤーでいることができたのは、その類まれな精神力もさることながら、フットワークの良さを指摘する者は多い。
福井烈元デ杯監督は、「軸がぶれない」、「上半身がぶれないので、安定した打球ができる」と、マイケル・チャンのフットワークに対して高い評価をしていました。
フットワークが良いとはどういうことでしょうか。
いくつか考えられますが、まず、足が速いこと、そして、ストップ、ターン動作をスムースに、タイミングよく行うことができること、バランスよく立つことができ、回転動作をスムースに行うことができること、などが挙げられると思います。
そのためには、それらの技能を習得するための特別なトレーニングや練習が必要であることはいうまでもありません。
しかし、テニスは「足ニス」といわれるように、フットワークの重要性は他のスポーツに比べて高いにもかかわらず、その指導法は確立されているとはいいがたく、指導書の解説と一流プレーヤーのフットワーク、特にフォアハンド・ストロークにおけるスタンスには大きな違いがあることがわかりました。
そこで、今回は、コントロールテストならびに3次元動作解析の結果についてみてみることにします。
●テスト概要
一流プレーヤーと、指導書において推奨するスタンスでは、フォアハンド・ストロークにおいて異なることがわかりました。
では、一般プレーヤー、特に初級プレーヤーにはスクエア・スタンスが本当に良いのでしょうか?
その疑問に対して、コントロールテストと動作分析を試みました。
実験に参加したのは、初級者2名、中級者2名、上級者1名の計5名で、スタンディング・ショットとランニング・ショットにおけるテストを実施しました。
スタンディング・ショットでは、ベースライン中央に立ち、、前方から打ち出されるボールに対して、各スタンス(スクエア、クローズ、オープン)をとるように、それぞれ10球連続して打球しました。
ランニング・ショットでは、シングルス・サイドラインとベースラインの交点をスタート地点として、前方からボールが打球された後スタートし、ベースライン中央付近で各スタンスをとるように、それぞれ10球連続して打球しました。
その際、被験者の側方および前方からビデオ撮影を行い、スイング動作を記録しました。
反対側のコート上には、AからYまでの25のエリアを設定し、ボールバウンド地点を記録し、ボールコントロールの指標としました。
なお、被験者には、ある特定のエリアをねらって打球するように指示しました。
そして、記録されたビデオから3次元座標値を算出し、動作分析を行いました。
今回分析をおこなった項目は、
1.各スタンスにおけるボールコントロール得点
2.各スタンスにおけるボール打球コース
3.左右足着地からインパクトまでの時間
4.右膝の角度変位
5.インパクト位置
6.肩関節角度、腰関節角度の角度変位と角速度
以上の項目です。
結果と考察につい打ては次回に報告します。
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2009年02月13日
テニスのフットワーク -3- (1576)
テニスの科学(28)
一般のプレーヤーにおいては、指導書を頼りにすれば、前述のようにフォアハンドストロークではスクエアかクローズ、バックハンドストロークではクローズが良いということになります。
それでは、一流プレーヤーは、どのようなスタンスで打っているのでしょうか。
もちろん技術レベルが違うので、一般のプレーヤーに比べてスタンスの出現頻度が異なるであろうことは容易に想像できますが、一流プレーヤーも一般プレーヤーと同じようにフォアハンドではスクエアやクローズが多く、バックハンドではクローズが多いのか、また、各スタンスの出現頻度はどれくらいなのかは非常に興味が湧くところです。
そこで、一流プレーヤーのゲーム中における各スタンスの出現頻度を調べることにしました。
調査したのは、調査時点での世界ランキング第1位のプレーヤー男女各1名で、対ストローカーと対ネットプレーヤーとの対戦について、それぞれ調査しました。
調査方法は、試合途中10ゲームのグランドストローク全ショットについて、その打球時点でのスタンスを1つづ記録していくという、大変原始的で根気のいる方法を選びました。
それが最も有効な方法です(でも、本当に大変な仕事です)。
そして、記録した全ショットをフォアハンドストローク、バックハンドストローク、フォアハンドリターン、バックハンドリターンの4項目に分け、それぞれの各スタンスの出現頻度を確認しました。
ビデオ分析の結果について、特徴的な点をまとめてみます。
1.フォアハンドはオープン
フォアハンドについては、ストローク、リターンともにオープンで打球する場合が圧倒的に多く、70%から80%の割合を示しています。
特に、女子プレーヤーのフォアハンドリターンについては89%と、ほとんどのショットをオープンで打球していることが示されています。
フォアハンドではスクエアかクローズが良いとする一般の指導書とはまったく異なります。
一流選手は違うのだ!といってしまえばそれまでですが、では、どこがどう違い、一般プレーヤーはいつから、一流プレーヤーのように打つ練習をすればよいのかという課題が残ります。
2.バックハンドストロークはクローズ
バックハンドストロークについては、男女のプレーヤーに共通して、対ストローカーではクローズが約50%と最も高い割合を示し、対ネットプレーヤーでは約80%と相当高い値を示しています。
バックハンドストロークについて、クローズの割合が高いことは、指導書で述べられていることと一致し、指導書の解説は正しいことになります。
では、相手プレーヤーのプレースタイルによって、バックハンドストロークにおけるスタンスの出現頻度が変わる、つまり、対ネットプレーヤーではクローズの割合が増えるのはなぜでしょうか。
ネットプレーヤーは、ネット付近で攻撃することが多く、それだけ角度を付けてショットすることが可能である(ワイドに攻撃できると言っても良い)。
そして、そのようなワイドに攻撃されたショットに対しては、当然、カバーする範囲が広くなり、遠位のボールに対して打球しなければならない機会は多くなるはずです。
その場合、バックハンドでは、ラケットを持つ手から遠いほうの打球を処理するために、踏み込み足を打球方向に大きく踏み出すことによって、身体の捻りを大きくする必要があります。
そのために、クローズが多くなると推測されます。
つまり、バックハンドでクローズが多いのは、利き手と反対側での打球に際して、身体の捻りを大きくする必要があるということです。
逆に、フォアハンドでは、身体を大きく捻る必要がさほどなく、そのためにオープンが多用されるのかもしれません。
どうも、身体の捻りとスタンスは密接な関係がありそうです。
3.バックハンドリターンは、オープン
バックハンドリターンでは、ストロークに比べて、オープンで打球する割合が増大しています。
特に男子プレーヤーでは、対ストローカーと対ネットプレーヤーでのバックハンドストロークにおけるオープンの割合は、それぞれ10%、16%なのに対して、バックハンドリターンでは55%、61%と、約40%もその割合が高くなっています。
女子のプレーヤーについても、バックハンドリターンでは、ストロークに比べてクローズの割合が減り、オープンとスクエアの割合が増えています。
2の結果について、バックハンドでは大きな身体の捻りが重要で、そのためにクローズが多くなるのであろうと推測しましたが、身体を大きく捻るためには、それだけ時間がかかります。
現代のスピードテニスでは、サービスは最も大きな武器であり、そのスピードは時速200kmを優に超えます。
そのために、身体を捻る十分な時間が無いと考えることができます。
その証拠に、サービススピードの速い男子プレーヤーの方が、リターンにおけるオープンの割合の増大が著しい傾向がみられます。
以上のことをまとめると、次のようになります。
1.フォアハンドでは、オープンが圧倒的に多く、バックハンドではクローズが多い。
2.バックハンドでは、ストロークとリターンではスタンスの出現の割合が大きく異なる。
3.身体の捻りと、相手のショットのスピードがスタンスに大きな影響を与える。
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2009年02月11日
テニスのフットワーク -2- (1574)
テニスの科学(27)
研究を進めるに当たって、
1.指導書を調査し、スタンスに関する記述の内容を整理すること。
2.一流プレーヤーのビデオ分析を行い、各スタンスの出現頻度を調べること。
※各スタンスとは、
●スクエア・スタンスー両足がサイドラインと平行なスタンス
●クローズ・スタンスー両足がサイドラインに対してクローズなスタンス
●オープン・スタンスー両足がネットと平行に近いスタンス
3.初心者、初級者、上級者のボールコントロールテストを行い、スタンスおよびレベルの違いがボールコントロールにどのように影響するのかを調べること。
4.各スタンスで打球中の3次元動作分析(特に足と腰の動きを中心)を行い、その特徴と技術レベルとの関係を把握すること。
を研究目標にしました。
「指導書の調査」
スタンスに関する研究の第1歩として、現在市販されている指導書および月刊誌、ビデオなどを詳細に調査し、その内容を検討することにしました。
調査した指導書の中から、テニスのフットワーク、特にスタンスに関する記述のあるものをピックアップし、内容を整理しました。
フットワークに関する記述は少ないのですが、それにも増してスタンスに関する記述は少ないというのが現状です。
スタンスに関する記述のあるものは、調査した50冊中の22冊で、半分以下です。
1.フォアハンドストロークについて
フォアハンドストロークについてみると、スクエア・スタンス(以下、スクエア)が良いとするものが7冊と最も多く、次いでクローズ・スタンス(以下、クローズ)が良いとするものが4冊で、この2つを合わせると、スタンスに関する記述のある指導書(22冊)の中で50%になります。
また、初級者について、クローズが良いとするもの、スクエアが良いとするもの、オープンが良いとするものがそれぞれ一冊づつあり、もし、それらの指導書を総て読んだ初級プレーヤーがいたなら、そのプレーヤーはどのスタンスを選ぶのでしょうか?
その他にも、ボールとの距離によってスタンスを使い分ける、という解説もありますが、プレーの中で瞬時にして距離を判断し、スタンスを選択するのは至難の業でなないでしょうか。
ここら辺りにも、フットワークやスタンスに関する指導の混迷を垣間見ることができます。
2.バックハンドストロークについて
続いて、バックハンドストロークについてみると、クローズが良いとするものが9冊と最も多く、次いでスクエアが良いとするものが4冊となっています。
バックハンドストロークのスタンスに関する記述のある指導書は、フォアハンドストロークに比べると少ないので、スクエアとクローズで70%以上を占めます。
その他に、フォアハンドストローク、バックハンドストロークともに「状況に応じて」という解説がありますが、どのような状況なのかについては詳細な説明はありません。
以上の結果からいうと、フォアハンドストロークではスクエアかクローズ、バックハンドストロークではクローズが良いということになります。
私たちの指導経験でも、フォアハンドストロークについてはスクエアがよく、バックハンドストロークについてはクローズが良いと指導する場合が多いので、予想通りの結果といえるでしょう。
しかし、そのことが必ずしも正しくないことは後でわかります。
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2009年02月10日
テニスのフットワーク -1- (1572)
テニスの科学(26)
テニスは「足二ス」といわれるように、昔からテニスにおけるフットワークの重要性は指摘されてきました。
テニスは移動範囲が大きい(ネットを隔てて対峙するスポーツの中では、最もコート面積が広い)ばかりでなく、急激なターン動作や俊敏な動きが要求されるために、ほかのスポーツに比べてフットワークの重要性はより高いと思われます。
特に近代テニスは、スピードテニスへと進化(道具やボールの改良は大いに関係があります)し、スイングスピードもさることながら、フットワークのスピードがより重要になってきました。
「フットワークが良いから、スイング動作が安定している。」
「フットワークの良いものは、リズムが乱れない」
など、フットワークの善し悪しが、プレーに大きな影響を及ぼすことを示す記述や解説は、多く目にするところであり、ストロークのミスの70%は、ストロークの打ち方自体ではなく、動きやバランスの悪さが原因であると指摘する研究者もいます。
これらのことから、「フットワークの善し悪しがテニスの勝敗を左右する」と断言してもよいと思います。
しかし、前述の会話のように、実際にテニスを指導する際には、フットワークの指導はあまり行われず、適切な指導書も少ないのが現状ではないでしょうか。
フットワークを指導する場合でも、確固たる自信があるわけではなく、なんとなく今までの練習方法を踏襲してきたに過ぎません。
テニスのフットワークは、単に走る動作だけをいうのではなく、準備姿勢、準備動作、テークバック、移動、停止、スタンス、スイング動作、リターンで構成されます。
そこで、これらの構成要素の中で、フットワークとして最初に習うであろうスタンスについて調査・実験し、フットワークの指導体系の確立に向けての第1歩を踏み出すことにしました。
その内容について、解説します。
コーチのみならず、ウィークエンド・プレーヤーにおいてもフットワークは大きな課題であり、少しでも役に立てればと思っています。
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2009年02月07日
テニスはどうすれば上手くなる -4- (1569)
テニスの科学(25)
さて、もう一つの障壁の「特異性」についてですが、これは簡単に言えば、そのスポーツの独特の動きを意識してトレーニングしなければ効果はないという理論です。
例えば、サービスの動作を向上させようとして、上腕三頭筋や大胸筋などの筋肉を個別にトレーニングしていくだけでは実際のサービスは速くなりません。
サービス動作を行う中に負荷をかけるとかして、その運動形態にあったトレーニングしなければならないのです。
このように、スポーツにはそのスポーツ独特の動きの「妙」があって、これを意識してトレーニングや練習を行わなければなりません。
これが結構くせものです。
それを体験したのが、私のバッティングの経験です。
実は、野球の指導を行っている際に、マシンでバッティングを行える機会を得ました。
その昔(いったい何年前でしょうか?)、野球少年であった私の心をくすぐり、密かな自信とともにバッターボックスに立ちました。
それまでスイング動作などを指導していたし、自分のスイングを鏡などで見たり、選手・監督にチェックを受けてかなりいい評価を得ていました。
しかし、飛んでくるボールを打っている自分の姿(動作分析のためにビデオを撮影していた)を見て愕然としました。
「こりゃーテニスのスイングだ!」
これが紛れも無い私の印象です。
ただバットを振っているときには、いっぱしの野球選手(?)である私が、実際にボールを打つということに意識を奪われるとテニス選手に戻ってしまうのです。
同じように「打つ」という形態のスポーツであるにもかかわらず、私の脳に組み込まれたプログラムはまさしく「テニス」なのです。
これが「特異性」です。
やはり、テニスはテニスのトレーニングを行わなくてはなりません。
今までは色々な運動を行わせることが良いとされてきましたが、ある時期からはその運動を専門的に行わせるべきだと思います。
運動プログラムが出来上がってくる7歳から11歳頃までにそのスポーツを十分に経験し、トレーニングを行うことが良いと考えています。
野球など、比較的類似性の強いスポーツならまだ良いかもしれませんが、やはりテニス選手を目指すなら、テニスを十分に経験させるべきです。
いくつかテニスが上手くなるにはどうしたら良いかについて私の考えを述べてきました。
その考えを整理しておきます。
素振りをする
簡単な練習から行う
練習やトレーニング方法を工夫する
やる気が大事
身体意識を高める
筋感覚を伴うイメージトレーニングを行う
色々なトレーニングをバランス良く組みあわせる
オンコートでのトレーニングを習慣化する
テニスの特徴的な動きをトレーニングする
早い時機にテニス専門の練習・トレーニングを行う
常にテニスの動きを意識してトレーニングを行う
知識を蓄える
項目別に整理すればこのような内容になります。
これには専門の研究者からは異論もあるかと思いますが、私なりに「科学的な知識を蓄積したきた」結果至った結論です。
参考になれば幸いです。
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2009年02月04日
テニスはどうすれば上手くなる -3- (1566)
テニスの科学(24)
「トレーニング」という言葉が出てきました。
トレーニングの必要性は誰もが認識しています。
しかし、いざ行おうとすると難しいものです。
それはいくつかの壁があるからです。
まずは、「意識」の問題です。
トレーニングは「嫌なもの」です。
「嫌なもの」を無理にやっても効果はあまり期待できません。
「やる気」でトレーニングの効果は大きく変化することは知られています。
だから、この「やる気」をまずもって高めることがトレーニングになります。
これには工夫がいります。
私の行っている工夫は、まずは道具です。
人間は、道具があるとやる気が出るものです。
道具には合理性を感じさせるし、より効率的にトレーニングを行うことができるように工夫を重ねた歴史が道具にはあります。
そのような道具を使うことはもちろん良いのですが、私は、手作りのバランスボードや安い家庭用のトレーニング機器を利用するように心がけています。
このような道具でも、工夫さえあれば立派にトレーニングの機器として活用できます。
しかし、「やる気」が高まってもまだこれで解決というわけにはいきません。
あと3つも壁があるのです。
これがまた厄介です。
その3つとは、「多様性」と「特異性」、そして「環境」です。
「多様性」とは、そのスポーツのパフォーマンスを向上させるには、多くの運動要素をトレーニングしなければならないという理論です。
運動要素とは、筋力やパワー、持久力やスピード、敏捷性、バランスなど、それこそ無数にあります。
それらを全部トレーニングしろといっても、無理ですね。
だから、どうしてもトレーナーの得意な分野のトレーニングに偏る傾向があります。
筋力主義者は筋力トレーニングばかり行うようになります。
このようなトレーニングの偏りは、テニスのようなボールゲームには大変に危険です。
間違えば、パフォーマンスの向上どころか、低下させることにもなってしまいます。
ひとつのトレーニングにとらわれずに多くの運動要素をトレー二ングしなければならないのは科学的にも正しい事実なのです。
そうなると、バランス良くプログラムを組まなくてはいけませんが、多くの知識が要求されるし、「環境」が整っていない場合には、それに合わせてプログラムを組み直すことも要求されます。
私が指導しているある運動クラブのトレーニングメニューは450種目以上にもなります。
これでは普通のコーチではお手上げです。
そこで、私はコーチにはテニスの動きを向上させるオンコートでのトレーニングから始めるように薦めています。
テニスでは、捻りや切り返し、急激な停止などの運動形態が多いですね。
それらの運動を取り出して、その動きがバランス良く行うことができるようにトレーニングを工夫することです。
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2009年02月02日
テニスはどうすれば上手くなる -2- (1564)
テニスの科学(23)
いくらこの基本的な練習が重要であることが理解できたとしても、民間のテニススクールで「素振り」を導入することは難しいと思います。
私も一般の方を対象としたスクールを受け持っていますが、素振りなどは行いません。
それは、1球でも多くボールを打ちたいという皆さんの要望に応えなくてはいけないという思いと、時間的な制約があるからです。
しかし、できるだけ優しい練習から行うほうが良いことは間違いないので、練習のはじめは、「手」でできるだけ優しいボールを投げて、それを打つから練習するようにしています。
いきなりネット越しにボールを送球することは避けていただきたいと思いますが……まわりのレッスンがそうでないとなかなか導入しにくいかもしれませんね。
また、 レッスンの導入にしてもそうですが、優しい技術から導入するようにしています。
ストロークよりはボレーの方が、対応という点から考えても優しいはずです。
小さな子どもに打球させてみると、ボレーのようにノーバウンドで打つ方がはるかにうまく打ちます。
これは、ボールの飛行軌跡の情報処理がワンバウンドのボールを打つよりもやさしいからです。
やさしいボールを打つことから始める方が、身体感覚をチェックすることもやさしいので、導入としてはこの方が良いと思います。
もちろん、ジュニアの選手育成コースでは素振りの練習を、トレーニングとして位置づけて行っています。
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2009年01月31日
テニスはどうすれば上手くなる -1- (1562)
テニスの科学(22)
「テニスがうまくなるためにはどのような練習方法やトレーニング方が良いのでしょうか?」
と質問されることが良くあります。
「これは絶対である。」
という練習方法はないということを前置きして、科学的論拠にたって十分納得のいく練習方法を紹介したいと思います。
まずは、きちんと段階的に練習法を行うことです。
どんなスポーツでも、基本練習、ドリル練習、応用練習、実践練習、実践(ゲーム)という段階で展開されるものです。
そこで、テニスおける基本練習は何かについて考えてみましょう。
「テニスの基本はラリーだ。」と答える場合は少なくありません。
ラリー練習の重要性は昨日のコラムでも述べましたが、「基本はラリー」ということについては疑問があります。
他のスポーツでは、型の稽古であったり、素振りであったりと実際にボールや相手との対応動作ではなく、自分自身の身体の動かし方を何度も、それこそ嫌になるほど練習します。
それには、2つの意味があります。
ひとつはそのスポーツに応じたフォームを習得すること、そしてもうひとつは身体の意識を高めることです。
身体の意識というと難しく聞こえるかもしれませんが、力の出し方やタイミング、バランスなどをチェックすることです。
テニスの練習を見ていると、この基本にあたる練習を行っている場面は非常に少ないと思います。
運動技術習得の理論でも、やさしい内容のものから困難なものへと順に移行していくことが望ましいとされているにもかかわらず、いきなり「ラリー」では初期段階の練習としては望ましくないと思います。
やはり優しい練習から始めたほうが良いと考えます。
では、どうすれば良いのかというと、素振りを行うことが効果的です。
素振りは単なるフォームの練習にとどまらず、身体意識を高めるためのトレーニングでもあるので、上級者やプロ選手も行っています。
彼らの行っている素振りは、身体意識を高め、動きなどをチェックするものなので、単なるフォーム練習ではないことは明白です。
さらには、より鮮明なイメージ作りにも一役買っています。
より鮮明なイメージを思い浮かべることができると、脳はそれが現実に起っていることなのか、イメージなのかを区別できないそうです。
ある運動を鮮明にイメージできると、その運動を実際に行うときに現われる筋活動が認められます。
このような筋活動を伴うイメージができれば、いつでもどこでも練習ができます。
電車で通勤や通学をしているときでも、軽く目をつむり、実際にスイングしている様子を思い浮かべ、その時、例えばバックハンドであれば、テイクバックのときの肩が引っ張られる感じとか、身体が捻られる感じもあわせて思い浮かべるようにするのです。
その筋感覚は練習すればだんだんと強くなります。
そうなればスイング動作は自分のイメージしたものに近くなり、上達は早くなります。
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2009年01月27日
テニスのアドバイス -7- (1558)
テニスの科学(21)
・スナップを使う
テニスのサービスなどで手首のスナップを使うのは好ましくない。
実際にスナップ動作を積極的に行なった場合には、ボールスピードもコントロールも悪くなることが実験的に確かめられている。
また、上級者ほどスナップ動作を使わないこともわかっている。
しかし、実際に写真などを見ていると、手首を返しているように見える。
これは前腕の回内と回外、肩の内旋と外旋、さらには手首を親指方向と小指方向に曲げる動きでこの動作を行なっているのであって、決して手首の返しの動作を使うのではないことを理解して頂きたい。
・肘を曲げて、ラケットを落とす
サービスに関係するアドバイスで、肘をあげてラケットヘッドを下に垂らすようにしてからスイングを指導することがある。
その時にラケットが背中を掻くようにとかいうようなアドバイスが行われることもあるが、これは間違いである。
実際にはフォワードスイングに向けて、身体の捻り戻しが先行し、これに前腕の回外と肩の外旋、さらには手首を親指方向に曲げる動きが行われることによって、円を描くような動きになるのであり、その場合に、ラケットが背中のすぐ近くを通ることは無い。
また、ラケットも肘を中心とした円運動になるわけではない。
・インパクトの瞬間にぎゅっと握る
ボールスピードを高めるために、またインパクトでのフェース面を安定させるためにインパクトの瞬間にグリップをぎゅっと握りなさいといわれることが良くある。
実際にはインパクトで強く握ってもボールスピードには影響は無い。
また、いちいちその様なことを考えて打球していては、スムースなスイングにはなりにくい。
逆に力を抜いて(ラケットを支えるように持って)、スムースに振り抜くようにした方が、インパクトにおける適切なグリップ力が発揮されやすいこともわかっている。
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2009年01月26日
テニスのアドバイス -6- (1557)
テニスの科学(20)
・膝を曲げる
膝を曲げることは安定したストローク動作のためには大変重要である。
ただし、どのように曲げたら良いのかについては良くわかっていないコーチが多い。
ただ曲げるだけでは、全力で走っていった身体の勢いを止めることは大変に難しく、身体のバランスを崩しやすい。
そのためには、膝を内側に十分に捻ることが大切である。
大腿を十分に捻るためには膝はある程度曲がっていなくてはならない。
この時の膝の曲げ角度が最も適切な角度であることを知って、ただ単に膝を曲げろというアドバイスは行なわないようにしたいものである。
・脇を締める
脇を締めるというアドバイスで大きな勘違いをしているのは、肘を脇腹の方につけるようにすることが良いと考えることである。
特にテイクバックで肘が脇腹について、いわゆる脇が締まった格好では、前腕の内外旋がうまく使えないので、スイングスピードを高めるためにも、ボールに回転をかけるテクニック(トップスピン)も発揮しにくい。
では、脇を空けた方が良いのかというと、結論はそうである。
しかし、締めるべきポイントはある、それは肩の前面である。
腕全体をスムースに振り抜くにはこの肩前面の筋肉の引き伸ばしを行ない、体幹の回転が急激に止まる時にあわせて今度は逆に肩前面の筋肉が収縮してくるような腕の振り方が望ましい。
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2009年01月25日
テニスのアドバイス -5- (1556)
テニスの科学(19)
・体重を乗せる
体重を乗せて打つとは、踏み込み足を大きくするなどして、打球方向への身体の重心の移動距離を大きくする打ち方をさせたい時などに多く使われるアドバイスである。
実際に体重を乗せるように打ったからといってボールの重量に変化があるわけではないが、打球方向への移動距離が大きくなることによって並進運動が大きくなりインパクトゾーンが広がるので、ミスショットが減ることが期待できる。
また、全身を大きく使うことを学習しやすく、前に踏み込むにはそれだけ早く準備の体勢に入らなければならないので、相手は打球のコースが読みにくく、戦略的にも重要である。
・軸を折るな
テニスは身体の回転運動が主体であるので、できるだけ回転効率をあげることが良いスイングということになろう。
そのためには、身体が過度に屈曲することなく、できるだけまっすぐな方が良い。
なぜなら、身体が屈曲すると、それを支えるために余分な筋力を必要とし、その部位の捻りが柔軟に行われにくくなる。
特に、サービスにおける膝の過度の屈曲や、ストローク動作における腰部の過度の屈曲や伸展は大きなマイナスである。
そのために「腰を立てる」などというアドバスが重要である。
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2009年01月21日
テニスのアドバイス -4- (1552)
テニスの科学(18)
・勢いを殺す
ドロップボレーやアングルボレーなどで、相手の強い打球のスピードを減少させ、ボールの飛距離を少なくしたい時のアドバイスである。
よくボールの下をこするとか、インパクトの瞬間にグリップを緩めるとかいわれるが、すごい勢いで飛んでくるボールに対してこのような仕事をすることは大変に難しい。
実際に行なっているのは、スイングのスピードをできるだけ遅くして、反発によるボールの跳ね返りスピードを少なくすれば良いのである。
そのためには、余分な動きを行なわず、自分が行なうスイングのスピードをゼロにするようなスイング動作や身体動作を訓練する必要がある。
・スマッシュでボールを指差す
スマッシュにおいて、ボールを指差すことはあまり好ましくない。
なぜなら、腕を強く伸展させて頭上に高くさし出せば、バランスが悪くなり、最も多いジャンピングスマッシュや低い弾道のロブには対応が遅れる危険性が高い。
また、強く差し出そうとすれば肩の筋肉は強く緊張し、肩周りの柔軟な捻りの動作が素早く行なえなくなる可能性も高い。
両肘は軽く曲げ、楽に上方に差し出すようにしながら身体を捻るので、指を差すというよりは、肘でボールの方向を差す方が正しい姿勢を作りやすい。
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2009年01月19日
テニスのアドバイス -3- (1550)
テニスの科学(17)
・トスを前にあげる
フラットサービスで強いサーブを打たせたい時に良くアドバイスされる。
何度も書いたように、テニスのスイングのパワーは主に身体の回転パワーである。
そのために腰や肩の捻りが十分に大きく、速い回転運動をしなくてはならない。
トスが身体の後方(ネットから遠くなる方向)にあがると、回転できる範囲が狭くなるので、大きな運動量を確保できない。
また、身体の反りが過剰に大きくなることが考えられ、身体を回転させるために余分な筋肉の負担が増えるので、効率的なサービス動作になりにくい。
・壁を作る
ストロークやサービスなどで、前に踏み出されている足の動作を急激に止めることを意味していると考えられる。
ゴルフなどでスイングのスピードを増すために最も重要なアドバイスのひとつである。
これは、大きな力を発揮できるが、重量が重く、スピードの遅い体幹部の回転動作を、足の伸展力を利用して急激に止めることで、その回転パワーをできるだけ肩や腕のスイング動作に伝達しようとする試みである。
そうすると、体幹部に比べて重量の軽い肩や腕は、運動量を保存するためにそのスピードを増さなくてはならない。
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2009年01月18日
テニスのアドバイス -2- (1549)
テニスの科学(16)
・腰で打つ
テニスは身体の捻りを使い、身体の回転力で打球するスポーツである。
その捻りのパワーを最大限に引き出すために、肩の位置を動かさないようにして、腰を先に回転させることで、最も大きな筋肉が集まっている体幹部の筋肉を引き伸ばすことが重要である。
また、肩よりも腰を先に回転させることで運動連鎖を引き出し、さらに効率的に回転のパワーを産み出すことができる。
・乗せて運ぶ、押す
インパクトにおける力の入れ方をアドバイスする感覚的な指導言語である。
これはコーチによって、乗せる感覚が好きであったり、押す感覚が好きであったり、主観的な感覚を押し付ける傾向が強いようである。
まったくのテニスの初心者にこれら代表的な感覚言語を与えてボールコントロールやボールスピードを調べた実験によると、ボールコントロールについては、「運ぶように」というアドバイスが最も良く、「押すように」というアドバイスは、コントロールスピードともに最も悪いという結果を示した。
また、「乗せるように」は、打球の発射確度が高い、つまりロブぎみのボールを打つ傾向が強いことがわかった。
このような感覚的なアドバイスは、日常的に使われる言葉を指導に用いるので、その言葉によってどういう動作を連想させるのかを良く考えてアドバイスを与えるべきであろう。
「押すように」というアドバイスが最も結果が悪いのは、押すという言葉が肘を伸ばしてものを押すことを強く連想させるので、実際のテニスでは、肘の伸展動作が大きくなり、うまく打球できないと考えられる。
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2009年01月17日
テニスのアドバイス(1548)
テニスの科学(15)
コ―チのアドバイスは技能を上達させるためには欠かすことのできない重要なものであり、多くのコ―チはどのようなアドバイスをしたら短期間で上手くさせることができるのかと日々頭を悩ませている。
このようなアドバイスの多くは、コ―チの長年にわたる指導経験によって培われてきたものであり、その効果は高い。
しかし、技能を向上させるのに、どのようなアドバイスがより効果的であるのか、その意味することは何かについての意見は、コ―チ一人一人によって違い、はっきりしていない。
指導における感覚用語と指導用語の意味する所を科学的に解明していきたい。
・横を向く
肩を入れるとも関連があるが、単に身体をネットに対して横に向けることを意味しているのではない。
テニスは身体の捻りを最大限に使って、身体を回転させる力を利用して打球することが重要である。
そのためには腰の捻りの角度と肩の捻りの角度に差がなければならない。
ということは、肩を十分に捻るために胸は横を向いても良いが、腰はやや正面に開き加減で、胴体部分を十分に身体を捻ることができるような構えが望ましいといえる。
多くのトッププロがオープンスタンスを多用し、身体を十分に開いて打っているのはそのためである。
ただし、こういう打ち方は、インパクトのタイミングを合わせるのはやや難しいので、初心者には段階的に導入する必要がある。
・ラケットを立てる。
ラケットを立てるという場合に、テイクバックでラケットを立てるという場合と、インパクトでラケットを立てるという場合でその意味合いは違う。
テイクバックでラケットを立てるということは、その後のフォワードスイングに向けてラケットの運動量を大きくするためには大切な要因である。
ラケットを高い位置に置いておいて、そこから大きくまわすようにスイングすれば、より少ない筋肉の負担で大きなラケットの運動量が得られる。
ただし、大きくすればそれだけ時間がかかるので、振り遅れの原因にもなってしまうので、スイングスピードとラケットの運動量のバランスを考えて指導しなくてはならない。
スモールサーキュラースイングを推奨するのはそのような理由からである。
一方、インパクトでラケット立てるというのは、インパクトにおいて最もグリップ力を必要とするので、手首が伸びてラケットを支える形にならないようにという意味合いで指導されることが多い。
これは大変に重要なことであるが、指導する場合には2つのことを考えなければならない。
ひとつは、ラケットを支える角度にはもっとも力の入りやすい角度があるということである。
腕とラケットが90度になるようになどという指導はナンセンスであり、人によ手もやや違うが140~160度程度の角度が最も力が入りやすいであろう。
もうひとつは、インパクトの瞬間の形や力の入れ方をアドバイスするのはあまり良い結果を生まないということである。
これは実験的にも確かめられており、最も楽に構えることができ、最も力の入りやすい形をって行くバックで作ったら、そこからはできるだけスムースに振り抜くことが良いのである。
なお、最も楽に構えさせるのに、「ラケットを支えるように持ってみて」というアドバイスは、「力を抜いて構えてみて」というアドバイスよりも効果的である。
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2009年01月16日
視覚能力の問題(1547)
テニスの科学(14)
リズムやテンポの乱れに対して、反応する能力が高ければミスショットは少なくなると書いた。
もちろんそうなのだが、できるだけリズムやテンポを変えないで試合をしたいものだ。
試合中自分のリズムやテンポで試合が進行しているときは、良いプレーができる。
そのためには、相手の動きからコースを予測する能力やボール対して反応する視覚的な能力が要求される。
また、眼の能力は大脳基底核と強い関連があることが知られている。
このことは適切な状況で運動を起こし、あるいはコントロールするためには眼の機能が高くなくてはならないということである。
実際に、眼の周りに特殊な装置を着けて視覚を遮断し、眼に入ってくる情報を少なくしていく実験を行ったところ、初心者ほどミスの割合は増加する。
初心者は、眼と手足の協調反応も悪く、的確な情報処理ができないので予測も外れやすいということである。
予測が外れ、そのとき筋肉が素早く反応してくれなければ、無駄な緊張を生み、りきんでミスショットをすることになる。
この視機能を高めるためのトレーニングを2つほど紹介しよう。
一つは、歩いたり、自動車を運転するときに一点だけを見つめないで、周りの状況を把握しながら移動することを訓練するのである。
例えば、じっと前の人の背中を見ながら歩いている時に、すれ違う人の髪型や持ち物をできるだけ正確に把握しようとするのである。
もちろんその人が美しいからといって振り返って見てはいけない。
あくまでも前の人の背中を注視しつつ行うのである。
これは周辺視野を鍛えると同時に、集中力の一つである選択的集中力を訓練するには効果的な方法である。
ただし、自動車を運転中にこのトレーニング行って事故を起こしても当方は一切責任をとらないので御了承いただきたい。
二つめは、窓枠の四隅に素早く視線を移したり、黒板に書いた円を素早くなぞったりすることによって眼の調整を司る筋肉に刺激を与えるのである。
これは、スポーツビジョントレーニングや速読の方法として良く知られている方法であるが、眼の反応が良くなるだけではなく、イメージ能力が高まるなどの効果も期待できる。
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2009年01月14日
筋力発揮調整力(グレイディング)の問題(1546)
テニスの科学(13)
相手の打球したボールに対して、適切な強さで、適切な時刻に力を発揮することができればミスショットは起こらない。
この筋肉の力を適切に調整する能力はグレイディングと呼ばれている。
この調整力が高ければ、多少緊張してもカラダが適切動いてミスショットの可能性を低くしてくれるのである。
テニスは予測が大切であると書いたが、予測がいつもビシバシとあたれば余裕をもってプレイできるので、タイミング良く力を調節できるのであるが、予測が外れたり、プレーのテンポやリズムが崩れたときには余裕がなくなり、力んでミスショットを連発する。
どのようなレベルの人でも、予測が異なった場合には、その予測のために準備しておいた運動プログラムをキャンセルして、新しい運動プログラムを用意しなおして、それに対応することが知られている。
つまりは現在進行中の運動プログラムはいったんキャンセルしないと新しい運動プログラムはスタートできないのである。
この切り替えが早く、プログラムの修正時間が短いほど巧みに動きを調節できるの、変化に対応する能力は高くなり、結果として余裕が生まれチャンスボールもミスしにくくなる。
そのような筋肉の力の調整力は訓練できる。
それには、筋肉の切り替え動作を練習することである。
簡単に言えば、力を入れることと抜くことを素早く交互にくり返すトレーニングをすれば良いのである。
そのトレーニング方法は、ラバーバンドを利用して行う方法が効果的である。
ラバーバンドを従来のように引っ張るのではなく、ラバーバンドを伸ばして止めた状態から力を抜いてラバーバンドの弾性で引っ張られた直後に、力を入れて元の状態に戻すことをできるだけ素早く行うことがポイントです。
これは大変に効果的なトレーニング方法であり、今までのラバーバンドのトレーニングの発想をまるっきり変えた新しい概念のトレーニングとして注目を浴びている。
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2009年01月11日
感情や性格の問題(1543)
テニスの科学(12)
攻撃的な性格の人は「チャンスだ!」と思うとりきんでしまう。
相手との力量差があまりなく、実力伯仲であればあるほどりきみは大きくなる。
逆に、やさしすぎる性格では、
「こんなやさしいボールを思いっきり打っては、相手の感情を損ねるかもしれない。」
と考えて、つい力を抜きすぎてミスをすることもあるだろう。
このように性格や感情はミスに大変大きな関りがある。
しかし、ではどのような性格がミスの少ない性格なのかというと、これは一概には言えない。
要は、自分の性格を知り、それに対応して感情などをコントロールする方法を身につければ良いのである。
これについても、いくつかの方法が提唱されているが、ここでは呼吸法の重要性を指摘したい。
特に、攻撃的で感情の起伏の激しい人は、いつも筋肉が緊張し、ちょっとした集中力の乱れでりきんでしまうが、呼吸法を訓練することにより、筋肉が弛緩する感覚を体得することができ、それによって感情や集中力の乱れを少なくすることができるのでパフォーマンスの向上に効果的である。
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2009年01月09日
チャンスボールでなぜミスをするか?(1541)
テニスの科学(11)
はたから見ると、一見なんでもないイージーなチャンスボールをことごとくミスする光景は良く目にするところである。
ミスをする要因は大きく二つに分けることができる。
1.メンタルの問題
・集中力
・感情や性格
2.スキルの問題
・筋力発揮調整力(グレイディング)の問題
・視覚能力の問題
これらの要因が重なりあって、結果として力んだり、バランスを崩したりしてミスをする結果となるのだ。
これらの問題は、相互に深く関係しているので、一概に分けて考えることができないが、あえて分類に従って具体例を示しながら解説していく。
集中力の問題
集中力が高ければミスなど起こりはしない。
しかし、試合中は至る所に集中力を乱す要因が潜んでいるものである。
騒音や風、太陽などの環境的コンディションが影響を及ぼすこともある。
「ミスをしてはいけない。」
とか
「これぐらいのボールはカッコ良く決められないと恥ずかしいな。」
と思う不安、
「この試合に勝てなかったらどうしよう。」
とか
「これをミスったら形勢が逆転されるかな。」
と思う恐怖などの感情が集中力を乱す大きな要因となることは容易に想像できるだろう。
しかし、
「しめた、これはチャンスだ!」
と考えることさえ集中力を乱す要因となるのだ。
チャンスボールをミスするのは、チャンスであると強く思いすぎて集中力を乱した結果なのである。
日常の練習やトレーニングでは、
「強くなりたい。」
とか
「絶対勝つんだ。」
と思うことは、強い動機づけとなり必要なものなのに、プレー中は邪魔になることがあるというところに、心のコントロールの難しさがある。
よく武術では、試合においては中庸の心持ちが良いとされる。
強く勝ちたいと思うでもなく、さりとて負けても良いとは思わず、平静な面持ちの中に高い集中力を要するような心を持つことが大切なことなのである。
では、試合中に集中力を乱さない具体的な方法を幾つか紹介しよう。
まずは、
「試合を楽しむんだ。」
とか
「試合が好きだ。」
と考えることである。
どの競技スポーツでもそうであるが、勝敗の行方ばかり気にしている人のプレーはどことなくぎくしゃくしているのに対して、試合を楽しんでいる人のプレーはゆったりしているものだ。
「楽しむ」という気持ちは、自分の気持ちをいわゆる中庸に保つ一つのキーワードである。
このような言葉を見つけて試合中呪文のように唱えることはキューワード法というメンタルトレーニング法の一つである。
ジミーコナーズは、試合を楽しむことを考えるようになってからプレーに余裕が出てきたといったそうであるが、その気持ちは集中力を乱さないためには必要なことなのである。
次に紹介するのは過剰学習法という方法である。
テニスではコースの予測が重要であるが、予測には相手のフォームやラケットスイングが重要な手がかりになる。
相手がボールを打ったらボールを見ることに、自分がボール打ったら注意をボールの行き先ではなく、相手の動きに、次に相手のラケットのスイングにきりかえることを意識的に練習することによって、集中力を高めることができる。
また、妨害法といって、様々な外的妨害のもとで練習することによって妨害に対する抵抗力を養い、集中力の乱れを少なくしようとする練習法もある。
例えば、騒音ややじを録音しておいたカセットを大きな音で流しながら練習するのである。
ただし、あまりやりすぎると近所迷惑や練習相手から嫌われることにもなりかねないので御注意を。
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2009年01月07日
膝を伸ばしながら打つ?(1539)
テニスの科学(10)
先ほどの実験の結果でも、他の多くの研究結果からも、上級者ほど膝関節を伸展しつつインパクトを迎えることが観察されている。
身体のパワーはそのほとんどが地面を蹴る力によって生み出されていることは、運動連鎖の理論によっても十分に理解できるものである。
そのことに異論を唱えるつもりはない。
ただ、より効果的な使い方を考えると、多くの指導書で解説されているように、
「出来るだけ深く十分に膝を曲げて、十分に膝を伸ばしながら打ちなさい。」
というアドバイスには納得いかない点がある。
膝を深く曲げることがあまり良くないことは、今までにも述べた通りであるが、もう一点は、タイミングの問題である。
膝をぐーっと深く曲げることは大変時間がかかることである。
以前の特集でも解説したことがあるが、筋肉の伸長性反射を積極的に活用することで、パワーの増大を図ることが出来るというプレストレッチを積極的に利用することが出来ないのである。
確かに、十分に時間があれば膝を十分に深くして、身体全体の運動量を大きくしてパワーを出そうという考えもわからないではない。
しかし、現実的には時間的な余裕はそれほどあるわけではなく、また、筋肉の出力の効率を考えると、出来るだけ少ない力で大きなパワーを生み出すことが出来ればこれにこした事はないのは道理である。
そのために短時間に筋肉を引き延ばし、その伸長性反射を利用するプレストレッチを活用した方が効率的であるのは事実である。
その時、単に膝の伸展運動を行なうよりも、膝を内旋させながら、身体を短時間に捻ることにより、胴体と大腿部の大きな筋肉を瞬間的に引き延ばすようにプレストレッチを行なうでより大きなパワーを発揮させることができるようになるはずである。
この場合でもやはり捻りが最も重要な動きであることには変わりはないのである。
また、膝を大きく伸展させることでトップスピンを強く打つことが出きるという理論にも疑問な点が残る。
確かに、膝を伸展させればスイング動作の上下動は大きくなるかもしれないが、もし、それを主体的にスイングしていてはあまりにも遅いスイングになってしまうのではないだろうか。
膝の伸展は、内旋と身体の捻りとあいまって身体の回転パワーを生み出すのであって、そのパワーが大きく、回転スピードが十分であるときスイング動作は素早く、するどいトップスピンにつなががっていくのである。
また、腕全体の力を抜いて、腰の回転で打球するようにすると、そのスピードが速くなると、ラケットを振り回す遠心力に抗して、自然と肘を曲げる筋肉や、肩の筋肉が収縮するそうである。
その収縮力と遠心力のせめぎあいの中で肘関節がやや伸展しながらインパクトを迎え、その後肘関節が曲がっていくというスイング動作を多くの上級者は行なっている。
決して自分の腕の力で曲げ伸ばしを積極的に行なっているのではないが、肩の筋肉が収縮するということは、腕は上方に持ちあがってくるということであり、そう考えると、身体の回転スピードが大きく、速いスイング動作を行なえば自然と腕が上方に持ち上がって下から上へのトップスピン・スイングになるのではないだろうか。
なにも、スピードの遅い膝の伸展動作を積極的に利用してトップスピンを打とうと思わなくても、伸展動作を行なうことによってスイング動作を早くすることを練習し、力を抜いて腕全体をスイングするなどのコツを習得することによってトップスピン打法は習得されていくことが望ましいと考える。
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2009年01月06日
膝は内側に捻る(1538)
テニスの科学(9)
膝には最も大きな力がかかる。
テニスでは全力で走っていって、急激に停止し、すぐに反転して元のポジションに戻らなくてはならないわけで、膝には体重の何倍もの力がかかる。
そのために、膝を走っていく進行方向にまっすぐに出したのでは、膝関節の伸展を行なう大腿四頭筋に過大な負荷がかかり、とても支えきれるものではない。
そのために膝は曲げるのではなく、内側に捻ることが重要になってくる。
サッカーのキックでもそうであるが、瞬間的に足関節や膝関節には人間が通常の筋力ではとても耐えられないほどの力がかかるが、上級者ほど膝と足関節を内旋させることにより負荷に耐えうるキックの仕方を習得しているので、強いボールを蹴りだしても膝、足関節を痛めるケースは少ない。
その機構については詳しいことはわかっていないが、内旋した脚は強い負荷に耐えうる構造的な強さを発揮するのに必要は動きであるといえる。
特に最近のパワー・スピードテニスでは、素早いフットワークが要求されるために、フォアハンドストロークでは特にオープンスタンスでの打球が必須の課題になっている。
その場合の脚は、動きを止めること、身体の捻転・回転運動の軸になること次の動作への移行の蹴り脚になることを1本の脚で行なわなくてはならないわけで、その負荷は大変に大きなものである。
昔のテニスでは、球足も遅く、ゆっくり止まって、軸足をセットして、踏み込み足を作りながら打球するケースが多かったと思われるので、膝を踏み込み足の方向にまっすぐに踏み出していきながら、滑らかな身体運動を行なうというフットワーク技術が重要であったかもしれないが、今は、そんな悠長なことをしている時間的な余裕が無いことと、足にかかる負担が大きくなってきたことを考え合わせると、膝の内旋の動きを習得しなければ習いであろう。
そこで、指導する場合には、「膝を内側に絞るように」とか「足の内側を意識して」というアドバイスが行われる。
このアドバイスは、動作の急激な切り返しを可能にし、安定した身体の回転軸としての機能を発揮させるのには大変有効なアドバイスであると思われる。
逆に「膝を曲げて」と強調しすぎるのはまり感心しない。
実際にやっていただければ分かるのであるが、膝を内旋させると、膝はそれほど深く曲げることは出来ない。
その曲げの深さで十分なのである。
それ以上に深く膝を曲げてしまうと、その膝を伸ばして身体の回転運動に結び付けようとしても体重を持ち上げるの負荷がかかりすぎてパワーをロスしてしまう。
肘関節でもそうであるが、最もパワーを発揮させることが出来る最適な角度が存在するのである。
膝関節に関するデータはあまり収集されていないが、肘関節と同様に130度前後が最も力を発揮しやすいと考えられる。
これは、まさに膝を内旋させて膝を屈伸したときの角度に近い。
膝を内旋させて曲げる、これが膝の最も有効な使い方であると考えられる。
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2008年12月28日
ストロークにおける膝の使い方(1529)
テニスの科学(8)
テニスの実技指導における最も重要な下半身の動きとして、膝の屈伸伸展運動と体幹の捻転があげられる。
では、テニスのストローク動作における膝の働きと正しい活用のしかたはなんであろうか。
1.膝はサスペンション
スイング動作中の肘関節と膝関節の関節角度変位を測定した実験では、肘の関節角度変位は比較的良い類似性を示し、動作が安定しているの対して、膝の関節角度変位は、上級者よりも初級者の方が安定しているという結果が示された。
この実験ではマシンから打ち出されるボールを打球したのであるが、その落下地点には微妙な差があるわけで、その変化に応じて、スタンスの取り方や身体の動かし方を調整する必要がある。
そして、その調整を担うのが膝の動きの最も重要な働きなのである。
上級者は、膝が車のサスペンションのように、打球されたボールに応じて下半身の動きを調整することによって、安定した上半身のスイング動作を可能にしているのに対して、初級者はステレオタイプ的にしか反応できないために、膝の柔軟性に乏しく、変化するボールに柔軟に対応することが出来ないものと思われる。
実際に指導にあたってみると、初級者はいわゆる「棒たち」で打球しているために、少しでもバウンドが高かったり、低かったりするとミスショットをしてしまうことは良く目にするところである。
とすれば、上半身のスイング動作ばかりにとらわれるのではなく、膝の柔軟性を高めるように指導を行うなど、下半身の対応動作、つまりフットワークの練習カリキュラムを積極的に取り入れる必要があるのではないだろうか。
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2008年12月27日
サービスにおける体幹の捻り(1528)
テニスの科学(7)
サービスでは、体幹部の捻りがより重要になる。
サービスでは、ストローク動作とは違い、高い打点で打つことも求められるために、スタンスを大きくとったり、下半身の動きを大きくして運動量を確保するというよりも、身体の回転する力で打球する技術が大切である。
そのためには軸を安定させ、身体を回しやくすするとともに背筋や腰部の大きな筋肉を引き伸ばすことによって得られる大きなパワーをスイング動作に結び付けていかなければいけない。
そのためには体幹部の捻りが姿勢の維持とパワーの確保という両方に有効に働く。
よく、プレーヤーが足を前方(ネット方向)に引き出しながら、体幹を逆に後ろに捻るような動作をするのは、体幹部を極限まで捻ろうとする試みなのである。
また、よく膝の屈伸を利用して強くうとうとすることがあるが、インパクトにタイミングを合わせるのが難しく、膝が伸びきってしまったところで打球するプレーヤーがいる。
このようなプレーヤーも体幹を捻るように意識することにより矯正できる場合が多い。
身体を捻ることができるようになれば、余分な膝の屈伸が行ないにくくなるのである。
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2008年12月26日
イメージトレーニングをしよう(1527)
テニスの科学(6)
コントロールを高めるためにはイメージトレーニングが効果があるだろう。
実に様々なイメージトレーニング法があるが、大きくいって外的イメージトレーニングと内的イメージトレーニングに分けられる。
外的なイメージとは、外から観察しているいわゆる“見ているイメージ”である。
自分の理想とするプレーヤーのテイクバックの位置やフィニッシュの姿勢などの視角的なイメージが主となり、それを目標としてイメージを思い浮かべながらスイング動作を練習するトレーニング法である。
これに対する内的イメージとは、自分が実際にスイングしているときに関与しているイメージであり、いわゆる“遂行しているイメージ”である。
理想のスイングに近づけるために、身体をどう動かすのかといった筋感覚的なイメージが主であり、肩の捻りや、身体の過重位置やリズム、バランスなどの身体感覚を感じながら行なうトレーニングである。
この2つのイメージトレーニングのうちどちらが重要なかというと、これまでの研究では内的なイメージが主体になるように、つまり自分が実際にスイングしたり、打球している時の身体感覚を感じながらイメージトレーニングをした方が効果が高いようである。
テニスにおいては、姿勢を保持するための背中の感覚、ストロークにおける軸足内側の感覚、テイクバック時の肩後面の感覚と捻り感覚が重要である。
もちろん、このようなイメージトレーニングとともに高い身体意識を構築するための指導が重要になってくる。
そのためには、何度も繰り返すが、応用的な練習だけではなく、身体感覚を感じながらくり返し行なう基礎的練習をおろそかにしてはいけないのである。
また、生徒の欠点をうまく模倣できるコーチは指導がうまいといわれる。
生徒の“身”になってスイング動作を行なうことができるということであろう。
そして、生徒と同じような筋感覚で打球することができるので、もしくはそれを感じ取ることができるので欠点や矯正点を導き出すのがうまいのである。
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2008年12月24日
ラケットを選ぼう(1525)
テニスの科学(5)
ラケットを含む道具の開発が、困難な技術を容易なものに変えていった。
木製で質の悪いラケットでテニスをおぼえ、重いラケットに対抗すべく、ラケットカバーなどをつけて一心不乱に素振りの練習で筋力をつけるしかなかった時代から、新素材によるデカラケや厚ラケ、超軽量ラケットの開発によって特別なトレーニングを必要としなくても、十分に力のあるボールを正確にコントロールすることができる今の時代は実に素晴らしいと思う。
しかし逆に、コントロールやスピードを高めるためにはどのようなラケットが適しているのかを考えて、ラケットを選らばなければならない時代なのである。
スピードを出すためならば厚ラケを薦めると書いたが、ではコントロールを高めるためにはどのようなラケット選ぶべきであろうか。
これには二通りの答えが考えられる。
その1は、ラケットをスイングするのに有効な体の使方がまだ取得できていない非常に非力な初級者のプレーヤー、特に女性のプレーヤーには厚ラケと薦める。
初級者のレベルでは前後のコントロールミスはもちろんであるが、左右のコントロールミスが大変多く、非力な女性の初級者の前後方向のミスについては、ネットミスが多いという報告がある。
ネットを容易に越えていかないのである。
このようなプレーヤーには比較的楽に飛んで、左右のコントロールが高くなるラケットが良いはずである。
我々の実験では、オフセンターで打球した場合、厚ラケとレギュラーの厚さのラケットでは4度程度ボールの反射角度に違いがあることが示された。
厚ラケではそれだけ左右への誤差が少ないのである。
また、厚ラケは反発性能が高く、ボールを容易に飛ばせやすいのである。
もう1つの選択は、トップスピンを打ちたい場合である。
その場合、同じスイング速度ならば、回転が多くかかるラケットが望ましいはずである。
レギュラーの厚さのラケットと厚ラケを比べると、はるかにレギュラーラケットの方が回転数が多い。
上級プレーヤーではスピンを重視しており、そのためにレギュラーラケットを使うのである。
通常のラケットよりも長いラケットやフレーム幅の薄いラケットもある。
スイングのバランスや重さなどに問題点がなく、ラケットの長さが長くなっても同じスイングスピードで振ることができるなら、それだけラケット上のインパクト位置のスイング速度は速くなるし、フレームが薄ければそれだけスイング速度が速くなることが期待できる。
トップスピン打法で回転の数をあげるためには、スイング速度をあげることが重要である。レギュラーの厚さか薄ラケで、デカラケ、ロングラケット、これがトップスピンを武器にしたい上級者が使うべきラケットの理想形かもしれない。
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2008年12月21日
トップスピンをマスターしろ!(1522)
テニスの科学(4)
ここにおもしろいデータがある。
1970年代を代表する2人の世界的プレーヤーであるジミー・コナーズとビヨン・ボルグのデータである。
御存じのように、コナーズはフラット打法の名手であり、ネットぎりぎりのフラットな打球で相手を追い詰めるタイプのプレーヤーであるの対して、ボルグはハードなトップスピンでのストロークを武器に、デフェンスの強さで世界に君臨した今世紀最高のプレーヤーの一人である。
さて、データであるが、コートの真横から見て、二人の打球したボールの速度や打球角度を想定したコンピュータ・シュミレーションをもとに、ネットぎりぎりに入るときの打球角度と、ベースラインをオーバーしないで相手コートに打球できる最大の打球角度を算出して、その差を比較したものである。
これをみると、コナーズが1度であるのに対して、ボルグは4.5度となっている。
たった1度の範囲内でボールをコントロールするコナーズには驚かされるが、この数値をみる限り、ボルグ有利は否めない。
実際、二人の対戦成績ではボルグが大きくリードしている(シニアツアーではコナーズが断然よい成績をあげてはいるが)。
これは、コナーズが1度の誤差しか許されないのに、ボルグは多少の誤差があっても相手コートに打球できるという利点と、打球角の広さを生かしワイドにコントロールすることが可能であるという利点があることを示している。
そのために、相手を走らせて自分に有利な状態で試合を運ぶことができるのである。
しかし、このデータの解説では、トップスピン打法は速いスイングスピードで打たなければならないので、大きなスイング動作が要求され、早く構えるために(他の打法よりも)素早く移動しなければならないので、一般のプレーヤーには不向きであるとの解説がある。
今から30年も前の話しで、今は、軽量で反発のよいラケットがたくさん生産されており、この当時指摘された欠点は道具の開発によって駆逐されつつある。
そうであるならば、トップスピンの技術を早期に習得しなければならないであろう。
時代が変わって、オールラウンドなプレーが求められるようになっても、トップスピンをマスターすることで強くなる可能性は高くなるはずだ。
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2008年12月20日
目標を明確にする(1521)
テニスの科学(3)
視角は、他の聴覚や筋感覚よりも優位にパフォーマンスに影響することはいうもでもないことであるが、技術の向上に必要な視角能力は、周辺視、奥行きの感覚、動体視力など網膜や皮質視角野に到達する視角入力であるといわれる。
コントールは、大脳中枢に関係する神経系の働きによることが大きいが、周辺視を拡大することで神経の伝達効率が改善されるともいわれ、ボールを注視しながら、周辺に対する視角情報を処理できるようにすることは、的確に相手の位置を把握することになり、ボール打球コースを選択することができる能力に直接的に結び付く。
これはかなり戦術的な側面ではあるが、ボールコントロールといってよいであろう。
奥行きの感覚については、人間にとって難しいものであるようだ。
その証拠を示すと、まず、上空の奥行きについては「錯視」がある。
これは、まったく大きさが同じ月であるのに、天頂にある月は地平線付近にある月よりも小さく見えることからもわかる。
写真でとれば全く同じ大きさに移っているのに不思議であるが、実際に天頂の月は小さく見える。
その原因についてはまだわかっていないそうであるが、視空間が歪められることに違いはない。
これがスマッシュのコントロールミスを引き起こす原因になっているかもしれない。
このような感覚をトレーニングするためには、応用的な練習だけではだめである。
比較的やさしいボールを何度も繰り返して打つ基礎的練習が重要なのである。
スクールなどでは、いろいろなドリルを消化して、目先の楽しみを提供することも必要なことは理解するが、感覚的なものを学習するには単純化された基礎的練習で距離感をつかむことが重要な事は忘れないでいただきたい。
余談ではあるが、サルには人間のような視空間の歪みがないそうである。
これは樹上で生活するサルが錯視をして、毎回のようの樹から落ちていたのでは生活できないことによるそうであるが、サルはスマッシュがうまいかもしれない。
また、コントロールとスピードの関係について調べた実験でも、左右の誤差に比べて、前後の誤差がかなり大きく、前後へのボールコントロールの難しさをあらわしている。
また、初級者に自分の打ったボールが相手のコートのどこでボールがはずんだのかを指摘するように指示すると、じつにばらばらな答えがかえってくるそうである。
これも、前後へのコントロールの難しさを示している。
ボールコントールを高めるためには、視角的な入力反応系の能力を高めることが大切であるが、その場合、道具を工夫することで大きな効果が期待できる。
ネットを不透明なものに切り替えた場合には、通常のネットに比べてネットミスが減少し、ネットの上に的を作り、ここを狙えば自動的にサービスコートに打球できるような方法ではサービスのコントロールが良くなり、ミスが減少したということである。
このように、目標物を明確に指定したりすることは高い練習効果が期待できる。
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2008年12月19日
ボールを見る(1520)
テニスの科学(2)
テニスが上級者のレベルにまで到達するには、
1.インパクト位置と身体との距離感覚(スペーシング)
2.ボールバウンドを見極め、打球のタイミングをあわせる(タイミング)
3.そのときどれくらいの力で打てば良いのか(グレイディング)
という感覚が高まってくれば上級者である。
力を抜くことを意識しながら、フォロースルーまで一気に振りぬくことはグレイディングの調整にも一役買っている。
しかし、タイミングやスぺーシングを調整できなければよいコントロールなど望むべくもない。
どうすれば、タイミングをあわすことができるのであろうか。
答えは簡単である。
それは「ボールをよくみる」ことである。
で、どの地点をよくみるのかというと、それはボールバウンドの地点である。
これは、視角をボールのバウンド地点まで特別な装置を使って遮断してしまうと、極端にコントロールが悪くなるという実験データが示している。
逆に、バウンド地点がよく見えてさえいればそこそこのコントロールで打球することができるのである。
以前、ボールのはずむところを注視することで上達するという、心理学的なアプローチからのテニスの指導書があったが、これはまさに正しい指導ということができるであろう。
もちろんそのタイミングに合わせて、ラケットを振ることを一生懸命に練習しなくてはならないことはいうまでもない。
よく見ることは大切であるが、視角から入力された情報に基づいて素早く動作を対応させるためには、素早い反応動作が重要である。
反応動作を高めるためには、特別なトレーニング機器やトレーニング方法が開発されているが、そんなトレーニングなんて苦しいことはしたくはないし、機器を買う余裕なんてない、という方に特別な方法を伝授する。
それは、何も特別なことではないが、いわゆるスプリットステップである。
スプリットステップを行なうことによって着地したときの反動動作、筋肉のばねや伸張性の反射を利用できるので反応が早くなり、素早い動作や移動できるのである。
素早い動作や移動ができれば、打球動作に時間的な余裕が生まれるはずである。
距離感覚は、打球動作に対して時間的な余裕があればそれだけ正確になりやすいので、正確な打球をコントロールしやすくなるのである。
相手がインパクトするときにジャンプ(15cm程度)の頂点が合うように集中して練習することぐらいはできるだろう。
下手なトレーニングをつむより効果的かもしれない。
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2008年12月17日
もっと力を抜こう(1518)
テニスの科学(1)
正確にコントロールするためには、発揮される筋力に無駄があってはいけない。
ただ単にスピードを高めるだけであるならば、多少筋力の発揮のしかたに無駄や効率の悪さがあっても、トータルの筋力があれば、他の筋力で補ってそれほどスピードを落とすことはないし、球速が時速2~3kmあがったり、落ちたりしても極端にパフォーマンスに影響を与えることはない。
しかし、コントロールについては、数センチのコントロールミスでゲームを失うことにもなる。
そのために、多くの指導場面では、ボールコントロールを重視する指導が行われるのである。
では、どうすれば無駄な筋力を使わずに打球することが可能なのか。
それには、以前のこの連載や特集でも述べたように、いかに力を抜く(ここでいう力を抜くとは、完全なリラックスではなく、力みのない、適度な緊張状態のこという)のかということである。
無駄な筋力とは、その多くが「力み」につながるのであるが、力を抜くように意識することで「力み」を防ぐことができることはおわかりであろう。
また、巧みな動作(うまいラケットコントロールや身体コントロール)を行なうには、筋肉が一瞬活動を止めて、それから急に活動を開始することが効率のよい動きにつながるといわれている。
筋肉が活動を一瞬止めてから止めることができる準備として、力を抜くということを常に意識して(つまり、適度な緊張状態を保って)いなくてはならないのである。
力を抜くことを意識することで、筋肉が収縮したり、弛緩したりするのをタイミングよく適切に切り替えることにつながるのである。
では、具体的に練習ではどのようなことをすればボールコントロールを良くすることができるのかについて述べよう。
まずは、テニスのスイング動作で最も重要な切り替えポイントでグリップの力を抜くように意識することである。
しかし、ラリーなどを行なっているときに力を抜くことを意識しながら打つことは、初中級者のレベルでは難しいようである。
そのために、やさしいボール出しのボールを繰り返して打つ基礎的練習をみっちり行なって、無意識的に力を抜くことができるように練習を行なわなければならない。
さて、それができたら、つぎにはフォワードスイングからフォロースルーにかけてラケットを一気に振りぬくように打球することである。
速くスイングする必要はない。
ゆっくりでもいいから振りぬくという感覚でスイングして欲しいのである。
よく、インパクトで力を入れるように指導される場合があるが、人間が意識的に筋肉をコントロールするには、スイング時間やインパクト時間はあまりにも短いし、フォワードスイング中にそんなことを意識していては、余分な力が入り、力みにつながったりしてあまり良いことはない。
それよりも、フォロースルーまで一気にに振りぬけばそのような力みにつながることは少なくなる。
そんなことは意識しなくても、そのようにスイング動作を繰り返しているうちに腕の筋肉が、このタイミングで、これぐらいの力でラケットをスイングすれば良いのだということを学習していくのである。
人間は実に良くできているものであると感心させられる。
また、ストロークとは振りぬくことを意味しているではないか。
途中でごちゃごちゃ考えずに一気に振りぬく。
これがコントロールを高めるためのコツなのである。
ただし、力を抜くことを忘れないように。
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