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大島コーチ
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テニスのフットワーク -3- (1576)



テニスの科学(28)

一般のプレーヤーにおいては、指導書を頼りにすれば、前述のようにフォアハンドストロークではスクエアかクローズ、バックハンドストロークではクローズが良いということになります。

それでは、一流プレーヤーは、どのようなスタンスで打っているのでしょうか。

もちろん技術レベルが違うので、一般のプレーヤーに比べてスタンスの出現頻度が異なるであろうことは容易に想像できますが、一流プレーヤーも一般プレーヤーと同じようにフォアハンドではスクエアやクローズが多く、バックハンドではクローズが多いのか、また、各スタンスの出現頻度はどれくらいなのかは非常に興味が湧くところです。

そこで、一流プレーヤーのゲーム中における各スタンスの出現頻度を調べることにしました。

調査したのは、調査時点での世界ランキング第1位のプレーヤー男女各1名で、対ストローカーと対ネットプレーヤーとの対戦について、それぞれ調査しました。

調査方法は、試合途中10ゲームのグランドストローク全ショットについて、その打球時点でのスタンスを1つづ記録していくという、大変原始的で根気のいる方法を選びました。

それが最も有効な方法です(でも、本当に大変な仕事です)。

そして、記録した全ショットをフォアハンドストローク、バックハンドストローク、フォアハンドリターン、バックハンドリターンの4項目に分け、それぞれの各スタンスの出現頻度を確認しました。

ビデオ分析の結果について、特徴的な点をまとめてみます。

1.フォアハンドはオープン
フォアハンドについては、ストローク、リターンともにオープンで打球する場合が圧倒的に多く、70%から80%の割合を示しています。

特に、女子プレーヤーのフォアハンドリターンについては89%と、ほとんどのショットをオープンで打球していることが示されています。

フォアハンドではスクエアかクローズが良いとする一般の指導書とはまったく異なります。

一流選手は違うのだ!といってしまえばそれまでですが、では、どこがどう違い、一般プレーヤーはいつから、一流プレーヤーのように打つ練習をすればよいのかという課題が残ります。

2.バックハンドストロークはクローズ
バックハンドストロークについては、男女のプレーヤーに共通して、対ストローカーではクローズが約50%と最も高い割合を示し、対ネットプレーヤーでは約80%と相当高い値を示しています。

バックハンドストロークについて、クローズの割合が高いことは、指導書で述べられていることと一致し、指導書の解説は正しいことになります。

では、相手プレーヤーのプレースタイルによって、バックハンドストロークにおけるスタンスの出現頻度が変わる、つまり、対ネットプレーヤーではクローズの割合が増えるのはなぜでしょうか。

ネットプレーヤーは、ネット付近で攻撃することが多く、それだけ角度を付けてショットすることが可能である(ワイドに攻撃できると言っても良い)。

そして、そのようなワイドに攻撃されたショットに対しては、当然、カバーする範囲が広くなり、遠位のボールに対して打球しなければならない機会は多くなるはずです。

その場合、バックハンドでは、ラケットを持つ手から遠いほうの打球を処理するために、踏み込み足を打球方向に大きく踏み出すことによって、身体の捻りを大きくする必要があります。

そのために、クローズが多くなると推測されます。

つまり、バックハンドでクローズが多いのは、利き手と反対側での打球に際して、身体の捻りを大きくする必要があるということです。

逆に、フォアハンドでは、身体を大きく捻る必要がさほどなく、そのためにオープンが多用されるのかもしれません。

どうも、身体の捻りとスタンスは密接な関係がありそうです。

3.バックハンドリターンは、オープン
バックハンドリターンでは、ストロークに比べて、オープンで打球する割合が増大しています。

特に男子プレーヤーでは、対ストローカーと対ネットプレーヤーでのバックハンドストロークにおけるオープンの割合は、それぞれ10%、16%なのに対して、バックハンドリターンでは55%、61%と、約40%もその割合が高くなっています。

女子のプレーヤーについても、バックハンドリターンでは、ストロークに比べてクローズの割合が減り、オープンとスクエアの割合が増えています。

2の結果について、バックハンドでは大きな身体の捻りが重要で、そのためにクローズが多くなるのであろうと推測しましたが、身体を大きく捻るためには、それだけ時間がかかります。

現代のスピードテニスでは、サービスは最も大きな武器であり、そのスピードは時速200kmを優に超えます。

そのために、身体を捻る十分な時間が無いと考えることができます。

その証拠に、サービススピードの速い男子プレーヤーの方が、リターンにおけるオープンの割合の増大が著しい傾向がみられます。

以上のことをまとめると、次のようになります。

1.フォアハンドでは、オープンが圧倒的に多く、バックハンドではクローズが多い。

2.バックハンドでは、ストロークとリターンではスタンスの出現の割合が大きく異なる。

3.身体の捻りと、相手のショットのスピードがスタンスに大きな影響を与える。


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テニスの科学 | 投稿者 大島コーチ 13:10 | コメント(2)| トラックバック(0)
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コメント
統計によるおもしろい結果をありがとうございます。
男女1名ずつのサンプリングでしたが、バックハンドについては両手打ち、片手打ちによるスタンスの差異はないでしょうか。また両手バックハンドについてもたとえばナダルとジョコビッチでは使うスタンスは変わってくるように思えます。統計的に何らかの解を求めようとするのなら、サンプリング数が「2」では少なすぎると感じます。特定の選手の癖がそこに反映されるのみの結果になってしまいます。

 ストローカーに対して、ボレーヤーに対してと状況別に分けたことは興味深いと思いました。その時の状況をもっと詳しく分析するとどうでしょう。ボレーヤーに対してはステイバックの状況でしたか?前に詰めながら打っていましたか?ワイドに走りながらランニングパスを打っている状況でしたか?
対ストローカーについても、その状況が相手の深い勢いのあるボールを合わせるように打っていたのか、少々甘くなったボールをベースラインから1・2歩入ってプレッシャーをかけるように打っていたのか、またはムーボールを下がりながら打っていたのか、などなど、打つ状況によって使うスタンスが変わってくるのが常識です。
 そのことを考慮しないとせっかく集めた統計の数字が生きてこないと思います。
スタンスやフットワークについては先に紹介したデビッドベイリーの指導法の他に、この理論の流れをくむ「勝者のフットワーク塾」というDVDシリーズ教材が参考になると思います。

よきコーチング、そして愛好家のために、ぜひ参考になさるとよいと思います。
投稿者 テニス情報局 2009/02/14 04:50
サンプルの数が少ないので、統計的に意味を持つということではありません。
それに古いデータなので、詳しい状況は忘れてしまいました(泣く)。
それでも、一般的な指導書で言われることと実際のプレーでは違うということを示し、フットワークやスタンスということについて興味を持ってもらえたらいいかなと思っています。
どんなスポーツでもそうですが、フットワークはパフォーマンスにおいて大変重要です。
是非、いろいろな角度からフットワークに関する情報を提供していただき、多くの方の参考になれば良いと思います。
投稿者 大島コーチ 2009/02/14 06:23
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