2009年02月21日
テニスのフットワーク -7- (1584)
テニスの科学(32)
◎タイミングを正しく合わせるためには、安定して立つこと
オープンスタンスは、インパクトのタイミングを合わせるのが難しいスタンスである、と書きましが、インパクトのタイミングについて、左右足の着地からインパクトまでの時間と、膝関節の角度変位の分析データを参考にしながら考察をすすめてみます。
スタンディング・ショットについて、各スタンスにおける左右足の着地からインパクトまでの時間を調べました
このデータをみると、技術レベルがあがるにつれて、右足(つまり軸足)の着地からインパクトまでの時間が全体的に長くなっていることがわかります。
これは、何を意味しているのかというと、上級者ほど、軸足で長く安定して立てるということです。
このことを確認するために、膝関節の角度変位の分析結果をみてみます。
右膝の角度変位をインパクトまでをしらべました。
これをみると、特に初級者については、オープンにおける角度変位の様相が、クローズとスクエアに比べて異なっていることがわかります。
正のピーク値(山の尖がり)の現れるのがインパクトに近く、その立ちあがりも急です。
つまり、急激に膝の屈伸運動を行っているのです。
中級者は、変位の幅は大きい(膝を大きく曲げ伸ばししている)ものの、膝の曲げ伸ばしが緩やかであり、スタンスによる違いはあまりみられません。
また、上級者は、すべてのスタンスにおいて、インパクト直前までの変位が少なく、約130度で推移しています。
初級者と、中級者が大きな変位を示したのとは対照的です。
上級者は、右足の着地が早いにもかかわらず、その変動が少なく、非常に安定して立っていることがうかがえます。
安定して立ち、ボールを待つということは、正しいタイミングをはかり、安定したスイング動作を生むためには必要不可欠なことです。
上級者は、そのための身体の動きや調整力を身に付けていると考えて良いと思います。
しかしながら、そのように訓練された上級者であっても、ランニングショットにおける、オープンでの打球では、コントロールにばらつきがみられます。
また、右足着地から左足着地までの時間も、右足着地からインパクトまでの時間も、オープンが最も短かかったです。
オープンは、踏み込む時間を節約して、すぐに回転動作に結び付けるための技術なので、軸足のセッティングもステップ動作の切り替えも素早く行われなければなりません。
このことからわかるように、オープンスタンスはそれなりに難しい技術であるといえます。
しかし、オープンスタンスはスイングのターン時間(全スイング動作にかかる時間)もリターン時間(走り出して、打球し、もとのポジションまで戻る時間)もクローズに比べて短いこと、また、相手の速い打球に対して、身体の捻りを大きくとらなくても打球することが可能であるなど、上級者が高いレベルでの試合に勝つためには、習得しなければならない技術であることは明白です。
どの段階で、どのような練習に取り組むのかというヒントが必要です。
また、上級者のクローズにおいて、インパクトに向かって右膝が屈曲していくという、他のスタンスと違う動作がみられます。
これは、踏み込み幅の大きいクローズにおいては、上半身が前のめりにならないように右足を左足の方向に寄せて、スムースな回転動作が行われるように調整していると考えられます。
踏み込み幅が大きい場合に、安定した回転動作、スイング動作を行うために必要なことなのかもしれません。
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