2009年01月09日
チャンスボールでなぜミスをするか?(1541)
テニスの科学(11)
はたから見ると、一見なんでもないイージーなチャンスボールをことごとくミスする光景は良く目にするところである。
ミスをする要因は大きく二つに分けることができる。
1.メンタルの問題
・集中力
・感情や性格
2.スキルの問題
・筋力発揮調整力(グレイディング)の問題
・視覚能力の問題
これらの要因が重なりあって、結果として力んだり、バランスを崩したりしてミスをする結果となるのだ。
これらの問題は、相互に深く関係しているので、一概に分けて考えることができないが、あえて分類に従って具体例を示しながら解説していく。
集中力の問題
集中力が高ければミスなど起こりはしない。
しかし、試合中は至る所に集中力を乱す要因が潜んでいるものである。
騒音や風、太陽などの環境的コンディションが影響を及ぼすこともある。
「ミスをしてはいけない。」
とか
「これぐらいのボールはカッコ良く決められないと恥ずかしいな。」
と思う不安、
「この試合に勝てなかったらどうしよう。」
とか
「これをミスったら形勢が逆転されるかな。」
と思う恐怖などの感情が集中力を乱す大きな要因となることは容易に想像できるだろう。
しかし、
「しめた、これはチャンスだ!」
と考えることさえ集中力を乱す要因となるのだ。
チャンスボールをミスするのは、チャンスであると強く思いすぎて集中力を乱した結果なのである。
日常の練習やトレーニングでは、
「強くなりたい。」
とか
「絶対勝つんだ。」
と思うことは、強い動機づけとなり必要なものなのに、プレー中は邪魔になることがあるというところに、心のコントロールの難しさがある。
よく武術では、試合においては中庸の心持ちが良いとされる。
強く勝ちたいと思うでもなく、さりとて負けても良いとは思わず、平静な面持ちの中に高い集中力を要するような心を持つことが大切なことなのである。
では、試合中に集中力を乱さない具体的な方法を幾つか紹介しよう。
まずは、
「試合を楽しむんだ。」
とか
「試合が好きだ。」
と考えることである。
どの競技スポーツでもそうであるが、勝敗の行方ばかり気にしている人のプレーはどことなくぎくしゃくしているのに対して、試合を楽しんでいる人のプレーはゆったりしているものだ。
「楽しむ」という気持ちは、自分の気持ちをいわゆる中庸に保つ一つのキーワードである。
このような言葉を見つけて試合中呪文のように唱えることはキューワード法というメンタルトレーニング法の一つである。
ジミーコナーズは、試合を楽しむことを考えるようになってからプレーに余裕が出てきたといったそうであるが、その気持ちは集中力を乱さないためには必要なことなのである。
次に紹介するのは過剰学習法という方法である。
テニスではコースの予測が重要であるが、予測には相手のフォームやラケットスイングが重要な手がかりになる。
相手がボールを打ったらボールを見ることに、自分がボール打ったら注意をボールの行き先ではなく、相手の動きに、次に相手のラケットのスイングにきりかえることを意識的に練習することによって、集中力を高めることができる。
また、妨害法といって、様々な外的妨害のもとで練習することによって妨害に対する抵抗力を養い、集中力の乱れを少なくしようとする練習法もある。
例えば、騒音ややじを録音しておいたカセットを大きな音で流しながら練習するのである。
ただし、あまりやりすぎると近所迷惑や練習相手から嫌われることにもなりかねないので御注意を。
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