2009年01月07日
膝を伸ばしながら打つ?(1539)
テニスの科学(10)
先ほどの実験の結果でも、他の多くの研究結果からも、上級者ほど膝関節を伸展しつつインパクトを迎えることが観察されている。
身体のパワーはそのほとんどが地面を蹴る力によって生み出されていることは、運動連鎖の理論によっても十分に理解できるものである。
そのことに異論を唱えるつもりはない。
ただ、より効果的な使い方を考えると、多くの指導書で解説されているように、
「出来るだけ深く十分に膝を曲げて、十分に膝を伸ばしながら打ちなさい。」
というアドバイスには納得いかない点がある。
膝を深く曲げることがあまり良くないことは、今までにも述べた通りであるが、もう一点は、タイミングの問題である。
膝をぐーっと深く曲げることは大変時間がかかることである。
以前の特集でも解説したことがあるが、筋肉の伸長性反射を積極的に活用することで、パワーの増大を図ることが出来るというプレストレッチを積極的に利用することが出来ないのである。
確かに、十分に時間があれば膝を十分に深くして、身体全体の運動量を大きくしてパワーを出そうという考えもわからないではない。
しかし、現実的には時間的な余裕はそれほどあるわけではなく、また、筋肉の出力の効率を考えると、出来るだけ少ない力で大きなパワーを生み出すことが出来ればこれにこした事はないのは道理である。
そのために短時間に筋肉を引き延ばし、その伸長性反射を利用するプレストレッチを活用した方が効率的であるのは事実である。
その時、単に膝の伸展運動を行なうよりも、膝を内旋させながら、身体を短時間に捻ることにより、胴体と大腿部の大きな筋肉を瞬間的に引き延ばすようにプレストレッチを行なうでより大きなパワーを発揮させることができるようになるはずである。
この場合でもやはり捻りが最も重要な動きであることには変わりはないのである。
また、膝を大きく伸展させることでトップスピンを強く打つことが出きるという理論にも疑問な点が残る。
確かに、膝を伸展させればスイング動作の上下動は大きくなるかもしれないが、もし、それを主体的にスイングしていてはあまりにも遅いスイングになってしまうのではないだろうか。
膝の伸展は、内旋と身体の捻りとあいまって身体の回転パワーを生み出すのであって、そのパワーが大きく、回転スピードが十分であるときスイング動作は素早く、するどいトップスピンにつなががっていくのである。
また、腕全体の力を抜いて、腰の回転で打球するようにすると、そのスピードが速くなると、ラケットを振り回す遠心力に抗して、自然と肘を曲げる筋肉や、肩の筋肉が収縮するそうである。
その収縮力と遠心力のせめぎあいの中で肘関節がやや伸展しながらインパクトを迎え、その後肘関節が曲がっていくというスイング動作を多くの上級者は行なっている。
決して自分の腕の力で曲げ伸ばしを積極的に行なっているのではないが、肩の筋肉が収縮するということは、腕は上方に持ちあがってくるということであり、そう考えると、身体の回転スピードが大きく、速いスイング動作を行なえば自然と腕が上方に持ち上がって下から上へのトップスピン・スイングになるのではないだろうか。
なにも、スピードの遅い膝の伸展動作を積極的に利用してトップスピンを打とうと思わなくても、伸展動作を行なうことによってスイング動作を早くすることを練習し、力を抜いて腕全体をスイングするなどのコツを習得することによってトップスピン打法は習得されていくことが望ましいと考える。
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