2008年11月16日
間をおく(1486)
リズムやテンポを崩さずに、自分のペースで試合を行うことで勝つチャンスは大きく広がります。
しかし、相手からプレッシャーを受けたり、緊張したりするとリズムやテンポが乱れます。
そんなときに、よく「間をとれ」とか「間をおけ」とアドバイスを受けることがあります。
この場合の「間」とは、「時間的な間」のことを指し、少し時間をおいて呼吸を整えたり、集中力を高めるために時間を使うことを意味しています。
それ以外にも、「間」は大変重要な意味をもちます。
今一度、伝統の武道から学ぶべき点を探してみましょう。
剣道は、日本古来の伝統武道です。
現代は、スポーツ化したといわれることもありますが、その中には何百年と脈々と受け継がれた戦法や戦術があります。
そのような剣道において、「間」は最も大切な戦術として認識されています。
剣聖と謳われる宮本武蔵は、「間を知り、外すことが勝利することの基本である。」としました。
これをスポーツ全般に当てはめることは難しいですが、タイミングをはずすという言葉が適しているのかもしれません。
また、「間合い」という言葉もあります。
相手と対峙したときの両者の状態を表す言葉です。
攻撃や防御のリズムとテンポとして捉えることができます。
相手の隙を突き、集中力が不十分な状態で攻撃を仕掛けることができるように、相手の心理を洞察する「心理的な間」のことをいう場合もあります。
このように「間」を知り、「間」を自分が有利に試合を進めることができるように最大限利用することが勝つためには必要です。
しかし、相手もできるだけ自分の「間」で試合を運ぼうと必死になるので、プレッシャーをかけてきます。
プレッシャーを受けると、多くの場合リズムやテンポは速くなります。
どうしてでしょうか。
自分のリズムを乱されると人間は不快感を持ちます。
できるだけ早くそのような不快な状態から抜け出したいために行動が早くなるのです。
特にポイントを失ったときには、不安や緊張は大きくなります。
その状況から早く抜け出したい気持ちが強くなればなるほど行動は早くなります。
また、相手の高いレベルの闘争心や冷静な集中力を感じると、その不安や緊張はさらに大きくなり、自分のリズムやテンポを乱していきます。
そのようなこころの状態を「あせり」とか「混乱」、[パニック]という言葉で表現します。
そのような状態がよくないことは誰でも理解していますが、そのときは「感情のほうが強い」ので冷静な判断は狂っています。
では、そういう状態に追い込まれそうになったときはどのように対処したら良いでしょうか。
最も良い方法が「間をおく」ことなのです。
気持ちを整理できないままでプレーに入ると、全ての行動のリズムを崩して、再び同じような失点を繰り返すことは多いものです。
同じミスを何度も繰り返すと「パニック」になって、自分本来のプレーを継続することは難しくなります。
そのようなときは「間をおく」ことによって、こころの状態に目を向けるのです。
そうすることで、その時点で自分がしなければならない行動が冷静に判断でき、同じミスを繰り返す確率は低くなるはずです。
また、相手の集中力の持続を阻止する効果も期待できます。
ポイントを取ったことで高揚しているだけで、早く次のポイントを取りたいと焦るような選手であれば、「間をおく」ことで焦りを誘い、相手のリズムを崩す効果は高くなります。
しかし、ここで注意しなければいけないのは、「間をおく」ことは、あくまでも「自分のため」にするということです。
よく、相手をじらすように間をとる場面を見かけますが、相手の行動に目を向けているうちは、本当のメンタルタフネスを手に入れることはできません。
相手のこころの状態を乱すことよりも、自分のこころの状態を最適にするために最大の努力を払うことが何よりも大切です。
そして、自分のこころの状態が整理され、最適な状態を作り出すことができたら、その状態を「構え」によって表現することがとても重要なことなのです。
最適なこころの状態とは、興奮しすぎる(あがり)のでもなく、冷めすぎている(さがり)のでもなく、「中庸(ちゅうよう)」という、ちょうどバランスのとれている状態のことです(スポーツによって、そのバランス点は若干違います)。
そのためにも、自分が最も心地よく行うことができる行動のリズムをつかんで、そのリズムやテンポを変えないで試合に臨むことができるように訓練することです。
こころの状態が最適であれば、相手はプレッシャーを受けて、同じように打っているつもりでも、自分のリズムが崩されてうまくショットを返せなくなってしまうのです。
ボールを打ち合うことだけに目を向けるのではなく、最適な状態で戦うことができるように、試合中の行動すべてをコントロールすることができるようになれば必ず強くなれます。
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