2008年12月24日
ラケットを選ぼう(1525)
テニスの科学(5)
ラケットを含む道具の開発が、困難な技術を容易なものに変えていった。
木製で質の悪いラケットでテニスをおぼえ、重いラケットに対抗すべく、ラケットカバーなどをつけて一心不乱に素振りの練習で筋力をつけるしかなかった時代から、新素材によるデカラケや厚ラケ、超軽量ラケットの開発によって特別なトレーニングを必要としなくても、十分に力のあるボールを正確にコントロールすることができる今の時代は実に素晴らしいと思う。
しかし逆に、コントロールやスピードを高めるためにはどのようなラケットが適しているのかを考えて、ラケットを選らばなければならない時代なのである。
スピードを出すためならば厚ラケを薦めると書いたが、ではコントロールを高めるためにはどのようなラケット選ぶべきであろうか。
これには二通りの答えが考えられる。
その1は、ラケットをスイングするのに有効な体の使方がまだ取得できていない非常に非力な初級者のプレーヤー、特に女性のプレーヤーには厚ラケと薦める。
初級者のレベルでは前後のコントロールミスはもちろんであるが、左右のコントロールミスが大変多く、非力な女性の初級者の前後方向のミスについては、ネットミスが多いという報告がある。
ネットを容易に越えていかないのである。
このようなプレーヤーには比較的楽に飛んで、左右のコントロールが高くなるラケットが良いはずである。
我々の実験では、オフセンターで打球した場合、厚ラケとレギュラーの厚さのラケットでは4度程度ボールの反射角度に違いがあることが示された。
厚ラケではそれだけ左右への誤差が少ないのである。
また、厚ラケは反発性能が高く、ボールを容易に飛ばせやすいのである。
もう1つの選択は、トップスピンを打ちたい場合である。
その場合、同じスイング速度ならば、回転が多くかかるラケットが望ましいはずである。
レギュラーの厚さのラケットと厚ラケを比べると、はるかにレギュラーラケットの方が回転数が多い。
上級プレーヤーではスピンを重視しており、そのためにレギュラーラケットを使うのである。
通常のラケットよりも長いラケットやフレーム幅の薄いラケットもある。
スイングのバランスや重さなどに問題点がなく、ラケットの長さが長くなっても同じスイングスピードで振ることができるなら、それだけラケット上のインパクト位置のスイング速度は速くなるし、フレームが薄ければそれだけスイング速度が速くなることが期待できる。
トップスピン打法で回転の数をあげるためには、スイング速度をあげることが重要である。レギュラーの厚さか薄ラケで、デカラケ、ロングラケット、これがトップスピンを武器にしたい上級者が使うべきラケットの理想形かもしれない。
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