2008年03月30日
筋肉の機能を高める(1168)
強くなりたいあなたに贈る100ぐらいの法則 -94-
練習や試合に入る前に簡単にストレッチをして、「さあ、これでウォーミングアップは十分だ。いつでも試合で全力を出し切ることができる!」、なんてことはまったくない(絶対にない!)。
ストレッチは、障害を予防し、身体ケアの意識を少なからず高めることを目的として行うトレーニングとしては大変有効なものであるが、強くなることを望むのであれば、さらに身体機能の向上を目的としたウォーミングアップを行わなければならない、これが法則である。
全日本などの大きな大会において、トップ選手は、試合前のウォーミングアップで、ストレッチだけにとどまらず、様々な体操やジャンプのトレーニングを組み入れて、入念にコンディショニングの調整を行っている場合が多い。
ジュニアの大会でもトレーナーが同行する学校やクラブがあり、ウォーミングアップやトレーニングの指導をきちんと行うケースが増えてきた。これは大変良い傾向だと思う。
しかし、具体的にウォーミングアップとしてどのようなことを行えば良いのか、ということについては、諸説まちまちで、日本舞踊や活花のように、何々流みたいなものまであって、「これだ!」と言えるものがないので、自分の思い思いに勝手にやっているというのが実情である。
もちろん、それでも成果が出ているのであれば何も文句を言う筋合いではないが、中には「おいおい、それはいくらなんでもひどいんではないの?」ということもあるので、科学的な見識をバックボーンに、実際の指導経験として十分に成果を上げている私なりの方法を述べて、参考にしていただきたいと考えている。
まず、ウォーミングアップは「順序」が大変大切だ。
はじめにストレッチなどをして関節の可動域を拡げ、次にランニングや軽体操を取り入れるなどして筋温を高めて筋肉の活動レベルを上げ、筋の収縮スピードを高めるための軽いトレーニング(時には少しハードなトレーニング)を行ってから試合に臨む、というのが有効な方法である。
ここでは、ランニングの方法や取り入れる軽体操については解説しないが、このあたりは、多くの試合を見る限り、結構しっかりやられているようなので、自分のその方法を信じてしっかりとやっていただきたい。
これすらやらない人は、これから先を読んでも無駄だと思うので、他の記事でも読んでいただくことをお勧めする。
ちょっとだけ付け加えておくと、ストレッチとランニングの順序は、気温や環境(屋内か、屋外か)などによって変わることもある、ということだ。
時折、寒風吹きすさぶ中、がちがちと歯を鳴らしながらストレッチしているクラブ活動を目にすることもあるが(しかも短パンで….。そんなあほな!)、そんな状態でストレッチなんかしても、ほとんど効果なんぞありませんよ。
それなら、少し走って身体を早く温めたほうが良いと思いますが….。
逆に、灼熱の太陽が輝く炎天下に、いきなり、かなりの時間ランニングさせる場合もあるらしいが、死んでも知りませんよ。
まあ、良識ある諸君なら、その点は理解してウォーミングアップを行っていると信じたいものだ。
テニスのような瞬発力を必要とするスポーツでは、基本的にランニングとストレッチで筋肉の活動レベルを上げてから、筋肉の瞬発力やスピードを高めるためのトレーニングを行うことで、そのパフォーマンスに良い影響を与えることがわかっている。
しかし、この「ウォーミングアップでトレーニングをする」、ということがあまり理解されていない、ということが問題なのだ。
中にはストレッチさえしていれば良い、という「ストレッチ神話」やランニングだけで十分だ、という「ランニング神話(?)」を信じている方がいる(多い?)のも事実である。
ある研究データでは、瞬発力を必要とするスポーツでは、ストレッチをすることで(ウォーミングアップにストレッチのみを行った場合)、そのパフォーマンスが低下する、という報告まである。
よく考えてみれば、ストレッチとは、筋肉をリラックスさせ、その柔軟性を高め、そのことによって関節の可動域を高め、障害などを予防しようとするものであるので、筋肉は基本的に弛緩していて、すぐに活動をおこす状態になっていない。
そのままの状態で試合に入れば、筋肉はすぐに100%は動かない、ということなので、試合のはじめから全力でその力を発揮することは難しい、ということは理解できるはずだ。
特に、ジュニアの試合では、その多くは(全国大会に出場が決まるというような大切な試合でも)1セットマッチで勝負が決まる(こんなことは日本だけよ)。
だとしたら、はじめから全力で体を動かす準備をしなければならないのだ。
そのために必要なトレーニングを「プレトレーニング」と言うが、(その重要性を認識していないので)このトレーニングを十分に行っていない選手を多く見かける。
そんなことで、自分の身体を存分に動かせると思うのはおかしな話である。
「プレトレーニングで筋肉の機能を高める」、これが強くなるためのウォーミングアップに欠かすことができない、ということをよく理解してほしい。
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