2009年04月10日
人を扱う(1592)
トレーニング論(1)
実は、今年は「トレーニング科学」という講義も受け持っています。
トレーニングは専門なので、講義もさぞしやすいと思われるかもしれませんが、全くそうしたことの知識のない学生さんの興味を引きつつ講義をするのは結構難しいですね。
専門用語を並べたてて、勉強していない学生が悪い、などと主張する先生もいますが、それでは講義の意味はあまりないように思います。
できるだけ身近な話題を織り交ぜながら、スポーツやトレーニングにそれほど強い関心がなくても、「この講義をとって良かった」と思われるものにしていきたいと思います。
この講義を通して、一番理解してほしいことは「人を扱う」ということです。
人間はロボットではありませんので、その日の感情や体調、気合いややる気によって出せる力などは大きく変わります。
指導する側とされる側の関係によっても出せる能力は変わります。
だから、理論的にプログラムされ、成果は十分実証されているトレーニングであっても、その効果は人それぞれに違います。
それを十分に理解し、対応力を持って、その選手の能力を引き出すことができるように指導し、プログラムを作っていかなくてはなりません。
私は、過去のいくつかの失敗を通してそんなことを学びました。
愛工大名電高校野球部のトレーニング指導を受け持ったことが大きな財産になっています。
野球部では、最初の1年間、毎回違うメニューを作って指導してきました。
それをマネージャーがノートに書き留め、一年間で大学ノート4冊ほどのボリュームになりました。
毎回違うメニューを作るのですから、それは結構大変な仕事になります。
プログラムのアイディアに詰まった時などは、子どもたちがトレーニングをしている姿を思い浮かべます。
どんな場所で、どれくらいの時間で、どんなことに注意して、どんな順番で指導するのかを十分にシュミレーションします。
その中で、自分なりに納得できる内容を整理していくわけです。
こうしたやり方をしようと思ったのは、今までのトレーニング指導の方法に疑問があったからです。
マシンなどで筋力や体力を測定し、その数値に合わせてコンピューターが決められたプログラムを選んでいくという方法が良く行われていました。
しかし、こうやって画一的に決められたプログラムでは期待する成果が出ていないということや、環境に適しないプログラムが選択されるので、結局は継続的に実施されないという現実を見てきました。
「何か」が足りない、そう強く感じていました。
それから自分なりのアプローチを考えて得た結論は、トレーニングで一番大切なことは「人を扱う」、ということです。
まず、人と人との関係をうまく結び、相互理解を深め、信頼を築くことが何よりも大切だということです。
それさえ出来れば、乱暴に言ってしまえば「プログラムなんて何でも良い」と思います。
もちろん、そういう関係を作ることが大変難しいので、簡単に成果が出るとは言いません。
でも、そうした考えを持って指導を続けることで、きっと今まで以上の成果は出るとはっきりと言うことができます。
「人を扱う」ということは大変難しい、だからこそ本当に楽しい、そんな思いを持って指導をしていこうと思います。
そして、その思いを学生さん達に伝えていこうと思います。
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